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2005年07月30日(土) ■ |
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『テロリストのパラソル』藤原伊織 |
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『テロリストのパラソル』藤原伊織 アル中の男が公園にねそべっている。少女が近づき、少し仲良くなる。男親が心配してやってくる。男は弁解する。「二人で世の中の真理について話していたんです」 冒頭のこの場面を読んでわたしは誰にも聞こえない声で『ビンゴ』とつぶやいた。初めて読む小説家で、最初から魅了してくれる小説にであえる可能性というのは、喫茶店でたまたま隣り合わせになった女性と付き合いに至る可能性よりは大きくはない。
期待通り、アル中の男はアル中のまま、ノーテンキに、粘り強く、男の魅力を振りまきながら、新宿中央公園爆破事件の犯人を追い詰める。途中の展開に少し無理があるのではないかと心配したが、最後は見事に着地した。まさかこれがミステリー小説第一作目だとは。主人公と同じく著者は東大卒の中年のおじさんである。
冒頭、宗教勧誘らしき若者が主人公の中年と一言二言交じわしたあと、肯いて言う。「やるじゃん、おっさん」 (05.05.26記入)
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