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2005年03月19日(土)
「夕凪の街桜の国」こうの史代

「夕凪の街桜の国」双葉社 こうの史代
一度読み通したあと、知らず知らずのうちにもう一度読み返していた。それで終わらずに、次には好きな場面をじっくり何度もながめていた。ーーいつのまにか時間が過ぎていた。

原爆は体だけではなく、心の中にまで入って苦しめていく。それを昭和20年代の話だけでなく、現代の東京に住む若者にまで続く話として描いたことで画期的である。未来に続く話、広島に限定されない広がり。しかし、それだけではない。

「原爆スラム」の建物群が懐かしく感じるのはなぜなんだろう。銭湯の女性の背中に残る傷跡、絶対に「あの時」の話をしない町の人々、それらが痛ましくも懐かしく感じるのはなぜなんだろう。告発型の原爆漫画とは違い生活の臭いの漂う漫画が静かに私の胸にしみていく。

大切な、大切な物語に出会わせてくれてありがとう。