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2005年03月18日(金) ■ |
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「柔らかな頬(下)」桐野夏生 |
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人生はさまざまな可能性に満ちている。多くのものを失いながら、幾つかのものを得ていくしかないのだろう。
桐野夏生の描く女性は『OUT』にしても、なぜこうも孤独で強いのだろう。カスミの娘を探す旅は必然的に自分を探す旅になる。カスミは捨てたはずの故郷に帰っていく。捨てられた親はいったいどのような人生を送ったのだろうか。そのことを知ることは、おそらくカスミのこれからの人生を予言することにもなるのだろう。
石山の人生は私には最も共感できるものであった。ヒモになるような才能は何一つ無い私なのではあるが。
内海の最期に見る夢(真実?)が鮮烈である。『だも私を救えない』文庫の帯を飾るこの叫びは、カスミのものであると同時に内海のものでもあるだろう。でも私は思う。内海は最後の最後で自分で自分を救ったのだ。いや、ごめんなさい。救ってはいない。救ってなどはいない。ただ内海は初めて『人生の意味』を見出したのだ。
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