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2005年01月03日(月)
「雑草にも名前がある」 草野双人

「雑草にも名前がある」文春文庫  草野双人
残念!雑草の事のみ書いている本ならよかったのに。扱っている草花は私の好きなものばかりだ。犬の子の尻尾という意味のエノコログサ、夕方にならないと咲かない宵待草、実はオオマツヨイグサ、中国からの渡来種で実際上海郊外で見たことのあるヒガンバナ、万葉集に「糞カズラ絶ゆることなく宮仕えせよ」とうたわれたヘクソカズラ、真夏の夜の妖艶舞カラスウリ、「その小さな青い花が、空の色を受けとめる鏡のようで、大自然と呼応しながら希望を抱いて賢明に生きる、けなげな姿」と著者が見事に説明したオオイヌノフグリ、「女郎花の花にふれゆく袖口の黄に染まりつつ山はしたしき」と歌われたオミナエシ、「雑草の中ではいちばんの美人」と著者も言うし、私もそう思うネジバナ、雑草の代名詞厄介物というイメージだが、他家受粉でしか結実しないという弱点も持っているヤブカラシ、多くの人は名前は知らないが姿だけはよく知っている、原爆の落ちた広島の街に異常発生したというヒメムカシヨモギ、春の七草の本当のホトケノザであるコオニタラビコ、刺身のつまにもならず役に立たないという意味で犬の名前が付くイヌタデ(しかし本当は下痢、皮膚病に効くそうだ)、山を歩くと必ず出会うが名前を知らなかったヨウシュヤマゴボウ(洋種山牛蒡)、等々。しかし、作者はそれだけを書いて良しとはしなかった。
 関根正二、阿仏尼、生田春月等々、歴史の中に埋もれ、雑草のようにたくましく生きた人々のエピソードを一章につき一人紹介する。どんな人が登場するかは、分からない。そういう人たちの話が全然面白くなかったわけではない。しかし私のこの本に求めていたのは、そういうものではないのだ。ほとんどの人がそうであろう。