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2004年12月04日(土)
「邪馬台国と大和朝廷」 武光誠

「邪馬台国と大和朝廷」平凡社新書 武光誠
邪馬台国論争の戦前戦後にかけての論点を整理し、邪馬台国と大和朝廷の関係を解き明かそうとした著者の視点は好感が持てる。しかし、学術的に信頼できるかというと、ずいぶんと疑問がある。専門的な部分は私は確かに疎いのではあるが、「巻向く遺跡の文化のあり方と、仏教伝来直前に当たる6世紀はじめの大和の文化のそれとの共通点が多い事から見て、大和で急激な政権交代があったとはみられない。それゆえ、巻向く遺跡を起こした首長が今日の皇室に連なると見て間違いがないであろう。」(15P)などと、ちょっと考古学をかじれば到底言えない事を平気で言っていたり(継体天皇断絶説を知らないのか)、著者が騎馬民族征服説の立場に立つのはまだいいとして、それを徹底的に批判した佐原真氏の説を紹介しないばかりか、弥生時代の権威だった佐原氏の名前が一度も登場しないような偏った学説の紹介のし方だと、この本は単なる「読み物」以外の何者でもないと判断せざるを得ない。まあ、全てが偏見に満ちた書物ではないと思うので、学説の整理には参考にはなるのであろう。