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2004年11月21日(日) ■ |
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「血と骨」は60点 |
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「血と骨」原作梁石日 さい洋一監督 ビートたけし 鈴木京香 新井浩文 田畑智子 オダギリジョー 濱田マリ 中村優子 北村一輝 寺島進 伊藤淳史
大正年間に済州島より日本に渡ってきた「在日」の人々の1970年頃までの物語。大阪の「在日」のスラムのみが舞台になっているため、日本の中の「朝鮮」の昭和史を描いた物語だとも言えるだろう。金俊平は戦後蒲鉾工場を立ち上げ、成功し、やがて金貸しに転じる。嫁、息子、娘たちは反発し、妾は脳腫瘍で寝たきり、いよいよ凶暴、強欲、絶倫になっていく。
韓国を旅してひとつ気が付くのは、彼らの日常的な感情表現の過激さであろう。人前で喧嘩が始まるのは当たり前。街中の女の子たちは常に腕を組んで歩いていく。パコダ公園で、政治的アジ演説を始めるひと、朗々と哀切な歌も始まる。韓国の代表的な感情表現といわれる「恨(ハン)」の意味はいまだによく分からないが、日本人の感情表現とは明かに違うということだけは分かる。この作品にほとんど日本人は出てこない。しかし韓国の人たちが観たら、強い違和感を覚えるだろうと思う。確かに感情の爆発はある。しかしそれを独り「金俊平」の「血」のせいにし、「感情」に対する人々の対処のし方、あるいは描き方は、突然場面が変わるなど、非常に抑制されてあり、見事な「日本映画」になっている。たまたま同時上映になった「オールドボーイ」と見比べると、「暴力」の描き方の違いは明確であろう。韓国映画の暴力は、なんというか、湿っぽいのだ。
この映画はあくままで、金俊平の長男の目から描かれている。ビートたけしの存在感は圧倒的ではある。しかしそれに対抗する男たちのなんとひ弱な事か。新井浩文、もう少しなんとかならなかったのか。唯一対抗したのは、鈴木京香と田畑智子か。しかし、金俊平の神格化を狙っていたにしては単なるごうつく親父にしか見えなかった。よって、この映画、なにを描きたかったのか、分からなかった。たまたま日韓映画の比較が出来た事が今回の収穫。
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