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2004年11月11日(木) ■ |
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「モンスター」は80点 |
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「モンスター」パティ・ジェンキンズ監督・脚本 シャーリーズ・セロン クリスティーナ・リッチ
シャーリーズ・セロンが13キロも体重を増やすという役作りをして、アメリカ初の女性連続殺人事件犯人として死刑になったアイリーン・ウォノースを演じる。
シャーリーズ・セロンはこの5年間、「ノイズ」というダメダメ映画でその美しさに魅了されて以来、ずっと私の「お気に入り」女優である。彼女が主演を張っているだけで、どんなダメ映画(例えば「レインディア・ゲーム」)でも満足して映画館を出る事が出来た。彼女は作品ごとに役柄どころか、髪型、髪の色まで変わる。しかし、その透き通るような肌は変わらず、ずーとそのアップ顔をスクリーンで観ることで私は至福の2時間を味わっていた。
と、いうわけで、この作品を観るには勇気が要った。この作品には、これでもか、と彼女のささくれだった肌がアップで出てくる。様変わりした顔、ぶよぶよの腹、下卑たセリフとガニ股で歩く姿、私には辛い体験だった。しかし、その辛さこそがプロデューサーとしてこの作品に情熱を燃やしたシャーリーズの狙いだったのだ。パンフで字幕翻訳者の松浦美奈が信じられない事を書いている。「美しいシャーリーズは美しくない女優がつかめたかもしれないチャンスを葬ってしまったとは思わないのだろうか?そんな事を言うのはヒガミなのかな。」これこそ女のヒガミとしか思えない。最初幼い主人公が女優を夢見ていたという告白が語られる。いろんな女の子はそういう夢をみるものだが、女優のシャーリーズはそれを実現した数少ない女性の一人である。しかしアイリーンは家庭環境の不幸もあり、正反対の道をたどる。一つ道が違うと、こういう風に同じ人間でも変わりうるのだと私たちはずーと1時間49分見せつけられる。これこそが映画の「力」である。その狙いも分からない字幕翻訳者の見識には失望した。
主人公アイリーンは確かに可哀想な部分はあるが、一方殺人に弁解の余地は無い。そして彼女の立ち振る舞いは彼女が嫌っていた自分を買う男たちの態度そのままだ。のぞけり、空威張りして、時々卑屈になる。彼女の環境をそのまま見せることは、80年代のレーガン政権が行ってきた弱いものを顧みない政策のツケを観る事にもなる。やはり彼女のアカデミー女優賞の受賞は本物だった。彼女のファンとして心からおめでとう、と言いたい。 もちろんこの2週間後、私は彼女が美しく復活しているに違いない「トリコロールなんとか」を観るのは言うまでもない。
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