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| 2004年08月30日(月) ■ |
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| 「星を継ぐもの」創元SF文庫 J.P.ホーガン 池央アキ訳 |
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「星を継ぐもの」創元SF文庫 J.P.ホーガン 池央アキ訳 25年前、私はSF少年だった。とはいってもおもに読んでいたのは日本SFで、ときたまアシモフやらブラッドべりやらクラークやらを読んでいたに過ぎない。その後、読書傾向はお決まりのように推理小説畑に移っていく。本当に長いあいだ海外SFなど読んでいなかった。それどころではなかった。ミステリ世界のとてつもない荒野が私の目の前に広がっていて私はいまだにその中で逡巡している。それに付け加えて世には他にも読みたい本があまりにも多い。例えば考古学関係の本なんかそれである。だからこの本に出会ったのはまったくの偶然である。目に付いたのは帯のこの文句。「SFにして本格ミステリ。」なるほど、それならミステリの一分野として読んでおこうか。
いやー面白かった。確かにミステリではある。しかも、考古学的「発掘もの」である。しかしそれ以上にスペースオペラである。あるいは「人類創世記」である。少年期にSFにかぶれるのには訳がある。「人間とはなにか。自分は何者か。」いわば哲学的な問いに答えてくれそうな読み物だからだ。久しぶりにあのときの気持ちを思いだした。今は改めて新鮮な気持ちで、エンターテイメントとして余裕をもって、その問いに立ち向かえる。人類の正体はなんだろう。未来の科学者たちの問答からいろんなことを考える。冷戦が永遠に続くかと思われた時期に書かれた二つの星の運命。この作者の理想主義が私には嬉しい。
この25年間、アメリカは偉大なSF作家を一人誕生させていたのだな、といまさら気が付いた。なんとこの作品はシリーズ化されているらしい。楽しみが一つ増えた。困ったことに。
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