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2004年08月29日(日)
『ファウスト第一部』集英社文庫 ゲーテ 池内紀訳

『ファウスト第一部』集英社文庫 ゲーテ 池内紀訳
本来全編にわたり詩編からなる『ファウスト』ではあるが、日本語で韻律を再現する事は難しい。ならば「詩句をなぞる代わりに、ゲーテが詩体を通じてて伝えようとしたことを、より柔軟な散文でとらえることはできないか。今の私たちの日本語で受けとめてみてはどうだろう。」という事で生まれた新訳。確かに読みやすい。しかも私には旧訳よりも物語の構造が非常によく分かる。

韻律等の約束事を気にせず、ストレートに言葉の持つ主張、比喩あるいは諧謔が伝わってくるために、読んでいて楽しい。「開幕前」の座付き作家、座長、道化の3者会話はまるで現代の映画プロデューサー、監督、コメディアン俳優の会話そのもの。あるいは三人問答によって明かにされる映画製作の問題点だ。いずれにせよ、古典を読めばいろんな発見がある。

その次ぎの「天上の序曲」。主と三大天使とメフィストとの会話。今回主(神?)の度量の広さというか、ずいぶんといたずら好きな部分に気が付いた。だって悪魔にファウストの堕落をけしかけたのは実は主であったとしか思えないのだもの。「お前たちは楽しい連中だ。」

さて、ファウスト博士の独白から物語は始まる。私ずっと勘違いしていました。ファウスト氏は当時の知識人の代表だと思っていました。だって主があんなに目を掛けているのだから。でもどうやらゲーテ以前に知られていたファウスト伝説では錬金術師だったみたいですね。いわばマッドサイエンティストに近い人みたいです。おっと、もう字数が一杯。まだ本文に至っていないのに。皆さんはまずはこの分かりやすい新訳を読んでもやってくださいね。お楽しみはこれから。人間の本性というやつは…。私は第二部に取り掛かるとしよう。