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| 2004年08月13日(金) ■ |
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| 「弥生時代」の時間 学生社 大塚初重 |
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「弥生時代」の時間 学生社 大塚初重 この間の考古学、とりわけ縄文・弥生時代の学説の変遷は著しい。考古学は「実証学問」であるから、一つの発見が大きく全体の学説を塗り替えていくのである。かって東北地方には弥生時代の稲作はなかったといわれていたのだが、青森県の垂柳遺跡から水田跡が発見されると、東北地域にも非常にスムーズに弥生文化が伝播したということになった。環濠集落は日本の発明かといわれていたのだが、韓国の検丹里遺跡が90年に発見され、朝鮮半島経由の集落形態だということがやっと証明される、という具合である。そういうことなので、分かりやすい弥生時代の概説本は今まで数冊あったのだが、ほとんど時代遅れになりつつあった。その中でのこの本の刊行は時期に叶ったものであったとも言える。特に2003年は加速器質量分析法により弥生時代の実際年代が大きく早まる可能性が出てきた年である。この本は99年の講義を基にして書かれてはあるが、いち早くその研究成果を取りいれている。学説として定まっていないのでまだ曖昧な表現で少し分かりにくいところはあるが、鉄器・青銅器・土器編年表にその学説を反映している。それによると今まで中国・朝鮮の文化の伝播は50〜100年のタイムラグがあったと考えられていたのだが、もっとすばやく輸入されたように考えられる。あるいは魏志倭人伝の資料としての年代が非常に信頼できるものとして現れてくる。などである。基礎年代が変わるという事は応用的な考察が遥かに大きく変わるということだ。これからの考古学は面白いぞ。
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