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| 2004年08月14日(土) ■ |
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| 「わが青春の考古学」新潮文庫 森浩一 |
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「わが青春の考古学」新潮文庫 森浩一 森氏の大学卒業までの半生記であると共に、戦中、戦後の考古学の関西地域の実録にもなっている。「僕は考古学に鍛えられた。もっと率直に言えば、考古学を通して自分で自分を鍛えた。」という森氏はまさに青春時代を考古学、あるいは「発掘」一色で過ごしている。その中で借り物ではない、自分のスタンスを持った意見が生まれる。
「一人の生涯のあいだに、一度も遺跡保存のために努力も発言もした事のない人は、本当の意味での学者ではないと確信している。」氏の弟子に当たる佐古和枝氏が妻木晩田遺跡の保存に成功させたのはそういう事なのだと納得。
「考古学の事を英語ではアーケオロジーという。…よく冗談で考古学はアルケオロジーといったものだ」それはなぜか。氏が学生時代に創刊した機関紙に書いているように「考古学は遺物の学としてより、遺跡の学へと進歩しつつある」博物館で見るだけではわからなかった事も実際の現地に行けばわかる事がある。ときには遺物がどのように埋められていたかということが研究に決定的な事実を付きつける事もあるのだ。しかしそれだけではない。遺跡から見える風景が大切なのである。私もその場所に立つだけで、遠く弥生時代の生活者の人生が迫ってくることがある。いろいろと共感するところが多い本ではあった。
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