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2004年07月05日(月)
「謎物語あるいは物語の謎」中公文庫 北村薫

「謎物語あるいは物語の謎」中公文庫 北村薫
ミステリーについてのエッセイである。トリックについて、先例について、解説について、解釈について。避けて通れない話題を通りながらも、北村薫はやはり独特の道を通る。ずいぶんと遠い回り道をしながら、いいたい事は一章につきたいてい一つ。

トリックについて、作家はいつも手品の種明かしを見た子どものように「なあんだ。馬鹿みたい。」といわれる危険を携えている。「しかし、友よ。それは犯す値打ちのある冒険なのだ。」と自らの覚悟を語る。いや、それは作家の「愉しみ」なのである。

見巧者としての解説者の文章を見てミステリーを読むほうがよっぽど作品世界を味わえる、場合がある事を北村薫は「解説」してみせる。なるほど「ニコラスクインの静かな世界」を読んでみたい気になった。

ミステリーについて、本格推理について、氏のまがう事無き「愛情溢れた文章」を浴びて、まずはまたミステリーの荒野に赴かん。(04.04)