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| 2004年07月04日(日) ■ |
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| 「口笛吹いて」文春文庫 重松清 |
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「口笛吹いて」文春文庫 重松清 負けてしまう事に慣れてしまうことは、寂しい事だけど、小説の主人公にはなかなかなり難いけど、現実では非常にしばしばある事だろう。そして、そんな自分が嫌で、明日から人が変わったように頑張り始め貫き通す、ってことは、現実的にはめったにある事ではない。たとえ心の中では何度でも決心したとしても。そういう難しい登場人物たちを小説に登場させて、なおかつ、エンターテイメントとして読ませるというのが、重松清の凄いところなのだ。
子どもたちは簡単に「負け組」「勝ち組」なんて言う。親たちはそんな「組」なんて存在しない、と一応は言う。けれども本当は親たちがこの10年間でその言葉を作ったのであり、決して子どもが作ったわけではない。なんということだろう。親たちも子どもたちも辛い現実を生きているのだ。ただ人生どんなときでも「希望」だけはパンドラの箱の片隅には残っている。それが「口笛」だったり、「参考書」だったり、「カタツムリ」だったり、「雪合戦」だったり、「アジサイの花」だったりするのだ。(04.04)
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