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2004年07月03日(土)
「茶色の朝」フランク・パヴロフ物語  藤本一勇 訳  大月書店

「茶色の朝」フランク・パヴロフ物語 ヴィセント・ギャロ絵 高橋哲哉メッセージ 藤本一勇 訳  大月書店
物語自体は大して新鮮ではない。「全体主義」的なこと、「反動」的な事は最初は小さなことからやってくる。それを「やり過ごしている」と、やがては自分の事として振りかかる。昔から良くいわれている事である。私が興味を覚えたのは、そういう「ありふれた」物語が、フランスでベストセラーになっているという宣伝の文句である。

物語は絵本形式を採っているので、ひどく簡単である。あのヴィセント・ギャロ監督の絵も彼の力強いペンタッチと優しいペンタッチが交互に現れ、面白いが、魅力的ではない。私を驚かせたのはこの本の出来た経緯である。1980年代末ごろからフランスでは極右政党が出てくる。98年の統一地方選挙で、この政党が躍進するに至り、パヴロフはこの本を出版する。そして2002年の大統領選挙でなんと決戦投票にこの政党の党首が最終候補に残るのである。ここに至りやっと大衆はこの本を発見し、ベストセラーに成るのである。あの選挙は私も注目していた。そしてシラクが勝利し、正直ほっとした。しかし一方ではよその国の出来事であると思っていた。しかし私はひるがえって考える。この本にかかれている事は果たして過去の出来事を寓話で現した事なのだろうか、あるいはよその国のことなのだろうか。この本が売れた経緯を知り、私は「あの」フランスでさえ気が付くのが決戦投票まで行ったのだ、いわんや、日本をや、と思ったものである。そう思ってもう一度読み返すとこの物語が生々しく現実的なお話に読めてしまうから不思議である。(04.04)