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2004年06月30日(水)
「指輪物語10追補編」評論社文庫 J.R.R.トールキン 

「指輪物語10追補編」評論社文庫 J.R.R.トールキン 
約一年間、『指輪物語』を読破するという私の読書の旅も終りを迎えつつある。半年間指輪と共にいたフロドは癒す事の出来ない指輪から貰った「傷」により「灰色港」に至るわけであるが、一年間この物語と付き合ってきた私も、直る事のない指輪の「影響」を受けたようである。フロドのように奇跡的にも滅びの山の火口にまでたどり着くような強靭な精神力と高潔な人格を持っていない、欲深い人間の私なので、とても灰色港から旅立つことは出来ないが、私は私なりにこの物語を咀嚼する事で「影響」の決着を付けたいと思っている。そしてそのための「追補編」でもある。

映画でセオデン王が『これで私も過去の王の名誉ある仲間に入る事ができる』といった事の意味が、「エオル王家」の年代記を読むと分かる。あるいは「アラゴルンとアルウェンの物語」では、理想の「最期の言葉」が述べられている。

「指輪物語」とは一人の作家の頭の中から出てきたとは思えないほど奇跡に満ちた一つの世界観でもある。もう一つの歴史、もう一つの地理、もう一つの言語と私たちは相対する。この物語を読み終った者は現代世界を相対的に見る目を持つ事になるだろう。

「トールキン指輪物語事典」 原書房 デビットデイ
指輪物語事典というより、「中つ国事典」といったほうがいいだろう。「ホビットの冒険」や「シルマリルの物語」も含めて、中つ国の歴史、地理、社会、動植物、登場人物を縦横に解説している。しかし普及版なので、地理の地図とかカラーならもっと良く分かったろうに、という部分が散見される。

これを片手に指輪物語を読むのはお勧めしない。よけい混乱するだけである。(というのが私だけだったら御免なさい)なにしろ指輪物語にも出てこない様々なエピソードをここでは解説している事が多いからだ。むしろ指輪物語を読んだあとで、この詳しい歴史を読んだり、映画で描かれる以前の世界である豊富な挿絵を鑑賞するのはとても楽しいものになると思う。

内容は非常に豊富である。「指輪」の「影響」を被り、もはや直る事はない「指輪病」である、と判断されるような人には必帯である。