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2004年06月23日(水)
「イラク戦争と占領」酒井啓子

「イラク戦争と占領」酒井啓子
混迷を極める現代のイラクの姿が、私には明治維新前後の日本と重なって仕方ない。民衆の反米意識、もはやフセインの手から離れたテロは米軍だけではなく、アメリカに協力的なあらゆる国、組織、イラク人にも及んでいる。それは幕末の壌夷運動に似てはいまいか。

あるいは民主化を求めるためのあらゆる模索。最初アメリカという上からの改革が提示されるが、やがてイスラームの台頭、あるいはイラク共産党の地道な活動、そして武闘派の台頭、いろんな勢力の百花僚乱。自由民権運動を想起しないだろうか。

もちろんイラクの現状はそういう一言二言で語れるほど単純ではない。未来は不透明ながら、第3章、第4章、終章では、酒井氏ならではの展望も語られる。しかし、それとて私にはやがて書かれるであろう、酒井氏によるイラクシリーズの第三弾への序章にしか思えない。それほど未来は日々変動している。ただ、この本には一般誌を読んでいたのでは到底見えないイラクの「現状」が確かに活写されている。特に第1章の著者本人による、イラク2003年7月現在のルポは、一番具体的で一番分かりやすかった。

我々にとって問題は、日本が果たすべき役割は何か、という事であろう。それは果たしてアメリカの要請を受けた形で自衛隊が「人道支援」に行く事なのだろうか。それを考えるべき幾つかの視点もここでは述べられている。(04.03)