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| 2004年06月18日(金) ■ |
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| 「「谷根千」の冒険」ちくま文庫 森まゆみ |
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「「谷根千」の冒険」ちくま文庫 森まゆみ 地域雑誌「谷根千」に出会ったのは今から10年ほど前だっただろうか。東京ぶらり旅でふと降りたのが日暮里駅。幸田露伴旧居を通って三崎坂を下る。円朝の墓を眺めて元愛染川だったへび道を歩いていると日曜野球の子供たちが自転車で通りすぎていく。ふと地元商店街の書店に寄るとこの下町情緒溢れる地域の観光マップらしきものが載っている地域雑誌があった。これは便利、と買い求めたのが、谷中・根津・千駄木を拠点に地元を調査・記録・紹介し、果ては「歴史建造物保存運動」のパイオニアまでになる「谷根千」という雑誌だった。私は帰りの電車の中で読み返し、いっしょにバックナンバーまで買っておかなかったのをひどく後悔した。そして同時にこの雑誌に関わっている森まゆみという稀有の文章家の存在を知った。
この本は「谷根千」を1984年に発刊したあとの七年間の記録である。育ち盛りの子供を持った主婦たち三人が、一つの地域雑誌を一万部発行まで育て上げ、なおかつ、様々な運動に関わっていった経緯が書かれてある。
今回改めて「谷根千」バックナンバーを引っ張り出して読んでみた。聞き書き中心の「足で書く」文章である事、広告収入に頼らないもの申す事には堂々ともの申す「志高い」雑誌である事を再確認した。この作品は、そういう雑誌はどのように作られるのか、そして自分の住んでいる地域とどう向かい合うのか、読み方によっていろいろなアプローチの仕方がある興味深い本だと思う。(04.02)
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