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2004年06月17日(木)
「心では重すぎる」文春文庫 大沢在昌

「心では重すぎる上」文春文庫 大沢在昌
大沢在昌が探偵を主人公にした作品を描くのだから、チャンドラーを向こうに張ってどのような文章を書くのか期待していた。そう、私は佐久間公シリーズは初めて読んだわけだ。彼にもいろいろ紆余曲折があったらしいが、今は立派な中年である。しかしこれほど議論する探偵も珍しい。マーロウ探偵みたいに粋なセリフを吐くわけでもない。ひたすら中年が今の若者の気持ちを知ろうとする。私などはまさしく佐久間公と同年代の中年ではあるが、「迷惑掛けるのは友達じゃない」という若者の友達観に怒ったりはしない。佐久間は命を掛けて怒ろうとしている。下巻が見ものである。

「心では重すぎる下」文春文庫 大沢在昌
クスリ、渋谷、マンガ家の失踪、自己啓発セミナー、暴力団、高校生、上巻ではばらばらだったこれらの項目が一つの形になっていく下巻である。最終も最終になって見事に収まっていく構成はさすがである。
「はじめてやさしいことをいったね」最終盤に至り錦織が佐久間公にこう呟く。この言葉はいったいなにを意味しているのだろうか。それは読んでからのお楽しみ。