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| 2004年06月16日(水) ■ |
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| 「藤沢周平残日録」文春新書 阿部達二 |
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「藤沢周平残日録」文春新書 阿部達二 この本は藤沢周平の4冊のエッセイ集から人物、場所、学校、食べ物、本、映画など約150項目を抽出したもの。加えて長編32編と短編3編のあらすじを記している。 エッセイ集を全て熟読している人にはわざわざ買わなくていいような本である。ただ全然発見がなかったかというとウソになる。例えば、藤沢の母「小菅たきゑ」の項では四つのエッセイ集全てからエピソードが抽出され、彼女の全体像がくっきり浮かび上がる短文になっている。あるいは長編「風の果て」の主人公桑山又佐衛門のモデルが庄内藩改革派の「菅実秀」という事が分かるなど、今までの藤沢文学研究の到達点もいくらか盛り込まれている。しかしそれはあくまでもエピソードの羅列に過ぎない。幾つかの大事な事実が外されており、この辞典が決して辞典としては決定版ではないことを示している。(04.01)
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