2024年07月20日(土) |
偏差値70のクラス |
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偏差値70のクラスと偏差値40のクラスの違いは何かというと授業態度や雰囲気である。偏差値70のクラスではチャイムがなるとすぐに着席して机の上には教科書やノートが準備されるわけだが、偏差値40のクラスではそもそもチャイムがなっても着席しないのである。いつまでも休み時間の気分でおしゃべりしていて、もちろん机の上も何も準備できていない。それどころか休み時間中にトイレに行くこともできていないので、授業が始まってすぐに「トイレ行かせて下さい!」と挙手する馬鹿がいる。学力偏差値の低い生徒は基本的にトイレトレーニングさえできてないわけである。
オレはこの授業態度というものはすぐに変えられると昔は思っていた。つまり、授業態度をきちんとすれば自然と成績はそれにつれて上昇するものだと思っていたのである。しかし、何十年も教えてきてつくづく思うことはそれが無理だということである。まじめな態度でちゃんと授業を受けようとするのは「人間性」の問題であり、そこは人間の根本の部分である。それをたかだか一教師のオレが変えられるわけがないのである。授業態度がきちんとしている生徒はそもそも偏差値40の世界には落ちてこないのである。
偏差値70のクラスの自習時間ではみんな手が動いている。数学や理科の問題を解く者はノートにしっかりと書きながら考えている。「自習」といえども密度の濃い勉強が出来ているわけだ。きちんと「負荷を掛けた学習」ができているのである。
偏差値40のクラスの自習時間では手が動いている生徒は少ない。多くの生徒が参考書や単語集をただ「見ている」だけである。たまに手が動いている生徒がいてもそれは同じ英単語を10回書いていたり、明智光秀、明智光秀と何度も書いているのである。そもそも「学習する」ことに対する向き合い方が全く違うわけである。勉強の質が伴わない以上、いくら時間を掛けても何年浪人しても結果は変わらないのである。楽なことをいくらしても筋トレの結果が出ないように。見てるだけの生徒は短期記憶しか身につかない。「なんでちゃんと覚えないんだ?」と訊くと、「今覚えても受験までに忘れるから直前に覚えようと思います」という愚かな答えが返ってくるのである。
どうしてこんな違いが生まれるのか。それは幼い頃からの勉強への向き合い方だとオレは思っている。「塾に行かされる」「私立中学に行かされる」という他からの強制が学習の動機付けになってるのは不幸だ。そんなことではいつまでたっても主体的に学ぶことはできないのである。
オレは授業開始時の挨拶、椅子に座るときの姿勢、背筋を伸ばして教師に正対する座り方をしてない生徒への注意をしつこくするが、偏差値70のクラスというのはそれが自然にできている生徒たちであり、偏差値40というのはそういう基本的なことから指導しないといけない生徒たちである。
しかし、私立中学に入学してくる生徒は中学1年の最初の授業ではみんなお行儀が良くて「偏差値70の授業態度」に近いのである。それが時間を掛けて堕落する生徒と、維持するだけではなく向上する生徒、それぞれが程度に応じて上下に拡散していくのである。そう考えたとき、授業というのはやはり「形から入る」ということは大切なんだろうとオレは思っている。空しい努力であっても、オレは形にこだわりたいのである。自分が時代錯誤のオッサンであることを自覚しつつ、時代の変化についていけないオレはもうすぐ教育の世界から退場していく。生徒たちはもはやノートと鉛筆を不要とする時代になっていくのである。
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