2024年01月10日(水) |
輪島大火で失われたもの |
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能登半島地震を伝える映像の中で、輪島市の朝市通りの大火を視たときにオレが思ったのは、そこにある「永井豪記念館」のことだった。永井豪の熱烈なファンのオレは一度そこを訪問したことがあるが、もしも一人旅なら一日中そこで過ごしたかったということである。記念館は焼失し、永井豪さんの貴重な原画も失われてしまったということである。
永井豪さんは不遇な作家である。オレは彼の業績は手塚治虫さんと並ぶと思っている。少年ジャンプが少年漫画誌のナンバー1の地位に上り詰めたのは、永井豪さんの『ハレンチ学園』が大人気だったからに他ならない。ところがこの作品は「作中に描かれるエロが教育上よくない」というレッテルを貼られ排除されてしまったのである。「スカートめくり」なんて行為を今の学校で行えばそれこそ大問題だろう。それを「明るいエロ」として描いたのが彼の作品だった。
オレが一番好きな永井作品は『けっこう仮面』である。ヒロインの美少女が悪を退治するのだが、戦うときには全裸になる。必殺技は「おっぴろげアタック」である。男達はたちまち戦闘不能となってしまうのである。他にも「きんたまをいじれば変身する」という『ヘンキンタマイダー』というふざけた作品など、エロを笑いに昇華させるそのセンスにオレはいつも見事にやられていたのである。
彼は問題提起的な作品も発表している。『スペオペ宙学』では昆虫を主食とする宇宙人が他の宇宙人に差別される状況を描いて人種差別問題を告発し、『オモライ君』では不潔さの極致を描く。そのユニークな発想にはいつも驚嘆させられたのである。
あの誰もが知る有名な『北斗の拳』という作品で描かれる世界は、実は永井豪の書いた『バイオレンスジャック』という作品とよく似ている。永井豪が『バイオレンスジャック』を発表したときも、さらに同時期の作品であるふくしま政美の『聖マッスル』も、共にその登場が早すぎたのだとオレは思っている。『聖マッスル』は全く人気が出ないで連載を打ち切られ、少年漫画はその後ラブコメ路線へと変化していく。『バイオレンスジャック』は関東地獄地震で荒廃した後の関東地方を描いているが、力が支配するその世界は『北斗の拳』で描かれる世界とよく似ている。強靱な肉体を持つ主人公が、暴虐非道の悪と戦うという設定も同じである。なぜ永井作品はもっと評価されなかったのだろうか。
『マジンガーZ』で女性が操縦するロボット兵器である『アフロダイエース』のおっぱいがロケット弾になってるという設定は子供心をワクワクさせたが、そういうさりげないエロを作品中に織り込んでるのが永井作品の魅力なのである。エロの要素を「青少年に有害なもの」として排除しすぎると漫画はくだらなくなってしまうのである。
能登半島地震からの復興のためには巨額の資金が必要だ。オレは永井作品が復刻上映されたり、新たにアニメ映画が制作されたりすることでその足しになればと思っている。それにしても『キューティーハニー』の変身シーンでヒロインが一瞬全裸になるところで脱がなかった西内まりやがオレの(エロい)期待を最高に裏切ったことだけはしっかりと訴えておきたい。美しいものはちゃんと見せないとだめである。
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