2021年11月23日(火) |
ハメこまれた人たち(トルコリラ) |
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FX(為替証拠金取引)をしている人には周知のことだが、高金利通貨の買いポジションを立てた場合、毎日その金利としてスワップと呼ばれる利息を受け取ることができる。たとえば日本円よりも金利が高いドルの買いポジションを立てた場合で説明すると、レバレッジ25倍の取引で1万ドルの買いポジションを立てるのに必要な証拠金は4万6000円である。そうしてたとえば1ドル=115円で1万ドルの買いポジションを持てば、一日当たり7円程度のスワップが入金されることになる。1年間で2500円ほどである。必要な証拠金が4万6000円ということから考えると、5.4%の利回りで運用しているのと同じことだが、それは1年後にも1ドル=115円という為替レートが変わらない場合だけであり、もしも1ドル=105円にドルが値下がりすればその時点で10万円の為替差損を抱えることになる。
オレが何を言いたいかと言うと、いくら金利がよくてもその国のインフレ率が高くて値下がりする可能性の高い通貨の買いポジションを持てば確実に大損するということである。その代表がトルコリラである。今FXの世界ではそこらじゅうで目に付くネット広告に騙されてトルコリラに投資した人たちが日々掛け金を失ってるのである。今年の1月には1トルコリラ=12円くらいで3月には瞬間的に15円に上がったこともあったがその後は「高金利がインフレの原因」という謎理論を信奉するエルドアン大統領は金利引き下げ圧力を強め、20%から徐々に引き下げて今は15%、12月には14%への引き下げが予想されている。
その動きを警戒してトルコリラの為替レートも順調に下がり続け、原油高も影響して対ドルのレートも下がり、それに引きづられて対円でのトルコリラの為替レートはついに今日10円を切ったのである。先ほど為替レートを確認したら1トルコリラ=8.9円まで下げていた。数年前は1トルコリラ=50円を超えていたのである。数年で価値が1/10以下になることなど想像もつかないだろう。
ところがネット上ではその危険なトルコリラ投資を勧める広告がやたら多いのである。それは高金利だから。ついこの間まで、トルコリラのスワップは43円、今は30円くらいだろうか。たった4100円で1万トルコリラの買いポジションを立てることができるのだが、それで毎日30円入ってくるのなら「放置してもお金が増える」と勘違いする人もでてくるだろう。しかしそれは為替レートが変化しない場合である。毎日のように下げ続けるトルコリラの買いポジションを立てれば確実に損をする。4100円で1万トルコリラの買いポジションを立てても、一日で50銭下がるとそれで損失は5000円ということになり証拠金はふっとぶのである。
ネットで「トルコリラ」「死亡」「破産」等で検索すると多くの負け組のつぶやきが出てくる。200万円負けたとか、起きたら全財産が吹っ飛んでいたとか、そういう悲惨な声ばかりなのだ。その負け分は実はFX運営会社の利益になっているのである。実際に投資に参加している人たちが日本円で現物のトルコリラを買い支えてるわけではない。あくまで仮想空間上の取引が実際の為替レートに連動しているだけだと考えた方がいい。
かつてはオーストラリアドル、ニュージーランドドルなどが高金利通貨として人気だった。ただたまに暴落して多くの投資家が大損した。リーマンショックの時の暴落はひどかった。いつしか金利が下がってそうした通貨の魅力がなくなった。そこで素人をハメこんでゼニを奪い取ろうとしてFX会社はメキシコペソ、ブラジルリアルなどの高金利通貨で巧妙に誘っているわけだが、中でも高金利だったのがトルコリラであり、それに惹かれて多くの投資家がお金を奪われたのである。
エルドアン大統領の考えが正しいのかどうかオレにはわからない。ただ、年20%もの高金利ならゼニを借りられないと思うし、景気には悪影響だとは思う。ただひどいインフレを抑制するにはそれ以外に方法はないわけである。もちろん未来のことはわからないし、今のトルコリラが底値で、これから暴騰して何倍にもなるという奇跡が起きる可能性が全くないわけではない。
オレは親日国であるトルコの人たちが、このひどいトルコリラ暴落の中でガソリン価格や輸入品の高騰で苦しんでいることがただただ心配なのである。日本政府はなんらかの救済策を考えてあげられないのだろうか。おそらく何も考えてないのだろう。それが日本の情けない政治家たちである。
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