2021年02月12日(金) |
近畿大学はすごい |
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コロナ禍とは無関係に今年も近畿大学は大量の受験生を集めた。近畿大学の受験生は今は必ずWEB出願しないといけないわけだが、その出願時に面白いオプションがある。それは追加でゼニを払うと、高得点の方を倍にして配点変更してくれるというオプションなのである。実際の受験料が3万5000円でも、追加オプションは志願者はほぼ全員利用するので結果として受験料を値上げしたのと同じ効果があるのだ。追加オプションを+1万円とすれば労せずして受験者数×1万円の利益を得られることとなる。
これを具体的に説明してみよう。近畿大学の文系学部は3教科で300点満点なんだが、英語100点、国語100点、社会100点のその配点を、社会だけ200点満点にして合計400点満点にしえもらえるのである。自分が受けた科目の中でたまたまもっとも高得点だった科目を自動的に2倍にしてくれるわけで合格可能性は高まることになる。そういう卑怯なオプションなのである。
受験生の人数には限りがある。どうやって売り上げを増やすかということを考えた場合、受験生を増やすよりも簡単なのは一人の受験生を何度も受験させて何回も受験料を払わせるという方法である。まず秋のうちに公募制推薦で受験させる。この公募制推薦はかなりの狭き門である。すんなりと合格できるのは関学や同志社レベルの学生であり、近畿大学が第一志望の受験生はこの公募制推薦で合格することはほとんどない。また、本命が同志社や関学の場合は合格しても入学しないわけで、入学定員のほとんどを残したままで近畿大学は1月下旬からの一般入試を迎えることができるのである。
近畿大学は商売がうまい。関関同立のすべてが理系の受験生に理科2科目をまだ課していた頃、近畿大学は理科1科目で受験することができた。物理だけ、化学だけというふうに得意科目1科目で勝負で来たのである。科目が少ないと志願者を増やすことができる。科目が少なかったらその少ない科目で絶対に失敗できない。そういうわけで受験生にとっては決して有利なことではないのに、受験生というのは基本的に馬鹿の方が圧倒的に多いので、科目数が少ないことは歓迎されたのである。関関同立の中で最初に理科1科目に踏み切ったのは立命館大学であり、結果として立命館は受験生を増やすことに成功した。以後、他の大学もどんどん追随したのである。
受験に必要な教科科目数を減らすことで受験生を増やそうとする大学というのは、能力の高い学生を集めることよりも、金儲けの方に興味がある大学である。日本中の国立大学の中で理系でも二次試験で国語の問題を課しているのは東大と京大、そして名古屋大の理学部・農学部だけである。それ以外の大学は理系に国語が不要と切り捨てたのである。
入試科目を減らして受験しやすくすれば不勉強な受験生が増える。これは普遍的な真理である。誰もが受験には必須と思っている英語を入学試験に課さない大学も現実には存在するのだ。たとえば國學院大学の文学部日本文学科では国語(現代文)と国語(古典)の2科目で受験できるのである。國學院大學は他の学科でも英語と国語を選択可能にしていたりする。このような入試科目にした場合、ものすごく国語が優秀な受験生が集まるかと言うと全然そんなことはなく、とてつもなく英語ができない受験生が押し寄せるというのが世の常である。ものすごく国語の成績が優秀な生徒は一般的に英語や社会もそこそこできるので國學院大學にはほとんど来ないのである。
ゼニを払えば入学試験の配点を自分有利に変えてくれるという仕組みで近畿大学は見事に成功した。近大と言えば「マグロ」が有名だが、そんなものは近畿大学の活動の一つに過ぎない。かつては関関同立よりも格下の産近甲龍(京都産業大、近畿大学、甲南大学、龍谷大学)の一つとしてとらえられていたが、今はその中から一校だけ頭一つ抜け出した感じである。このみごとな戦略を立てているのはいったい誰だろうか。
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