2020年10月13日(火) |
裁判の社会正義とは何か |
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裁判所は本来正義を実現するための場所であるとオレは思っている。犯罪者に対してきちんと罰を与え、社会的弱者の立場に立って世の中の不条理を正すこと、それが裁判所の大切な役割である。政治家の悪に対して堂々と正義を主張し、たとえ相手が総理大臣であっても習近平であっても、悪いことは悪いときちんと判決を下し、それによって裁判官が仕返しをされたり左遷されたりということがないというのが正しい裁判所の姿である。
しかし日本ではそうではない。国や行政、警察などが被告になっている裁判で正義の判決を出した裁判官はたいてい左遷される。正義を貫いて原発の運転停止命令を出せるのは定年前のもう出世なんかどうでもいいような裁判官だけだ。まだ若くて未来のある裁判官はどんなに判決内容が非合理であっても体制側におもねった判決を下すのである。それが日本の裁判の実態なのだ。「正義が勝つ」のではなく、「権力のあるもの、強いものが勝つ」というのが裁判である。
契約社員が正社員との格差を訴えた裁判で、最高裁は一部原告の訴えを認めた高裁の判決を破棄して、訴えを棄却した。東京メトロの売店で7〜13年間働いていた4人の女性が退職金がないこと、労働条件に不合理な差があることは労働条件の不合理な違いを禁じた労働契約法20条に反するというのがその訴えの根拠であった。
今や日本では労働者の4割が非正規雇用である。小泉純一郎が総理の時代の規制緩和の流れを受けてどんどん派遣労働の分野は拡大しているのだ。大阪では区役所などの窓口業務がどんどんパソナからの派遣に置き換えられているという。公務員の人数を減らして人件費を削減したということが成果のように語られるが、実は行政サービスを低下させて竹中平蔵が儲かってるというだけなのである。
少なくとも裁判は弱者の味方であって欲しかった。今回の裁判も正社員に比べればはるかに少ない退職金やボーナスを求めているだけなのに、それすらも否定されるのだ。最高裁がこのような判決を出すということは、そうして従業員に格差をつけている企業の理不尽なやり方に対してお墨付きを与えるのと同じである。どうして裁判所は「正義」ではなくて「悪」に加担するのか。
日本の若者が貧しくなったのはなぜか。それは多くの若者が「非正規雇用」という不安定な立場に置かれているからである。そのままの状態で30代、40代を過ごしているからである。中にはそのまま高齢者に突入する者も出てくる。無期雇用ではなくて安定した人生設計ができないから結婚もしない。それが少子高齢化にもつながっている。
この「少子高齢化」という今の日本にとってもっとも大きな問題を解決する一つの道筋が「非正規雇用の権利拡大、待遇改善」ではないのか。裁判所にはそうした流れを作る役割があったのではないか。それなのになぜこんな世界の流れに逆行した理不尽な判決を出すのか。
バブル以降の失われた30年間、日本人は貧しくなり続けた。貧富の格差はどんどん拡大した。海外の若者に比べても日本の若者はどんどん貧しくなった。1980年代に東南アジアや東欧を旅行した若者が感じた物価の安さを、今は日本に旅行してきた外国人が感じるようになった。日本への観光客が増えた最たる理由は「安く旅行できる」からである。オーストラリアのブリスベンで2年間過ごしたオレの息子は帰国してからカップ焼きそばを食っていて語った。「こんなうまいものが100円もしないなんて日本は天国だ」と。100円以下で買えるカップ麺が大量にあって、3食それで済ませれば一日の食費はたった300円で済む。30日間それで済ませれば月1万円もかからない。オレはそれを正しいとは思わない。もっと正当な値段をつけろと思うだけである。
イオンに行けばPB商品のカップ麺が安く並んでいる。オレはそれを別に88円で買いたくはない。100円でも120円でもいいと思っている。適正価格にしてその分をそこで働くパートさんやアルバイトさんたちに支給してほしい。もしもイオン店舗に賽銭箱があって「ここに入れてもらったお金は働いてる人に公平に分配されます」という仕組みになっていればオレは喜んでお金を入れるだろう。あらゆる商品が安すぎることが問題なのだ。
携帯料金を下げたら電話会社はどこで利益を出すのか。もしかしたらさらに働く人の給料やボーナスを減らすのではないか。政府が目指すべき政策とは携帯料金を下げることではなくてみんなの給料が上がる方向ではないのか。すべての労働者が正当な賃金を得ることではないのか。
非正規雇用者に対する理不尽な差別を認めたこの最高裁判決は時代を大きく逆行させた。労働者を正規雇用、非正規雇用に分けることは経営側にとっては都合のいいことである。両者の対立を利用できるからだ。ベルギーが植民地のルワンダを統治する時にフツ族とツチ族を分断させたように、日本もどんどん支配者の都合のいい国になっていく。オレはそれがたまらなく嫌だ。オレはこんな世の中を変えたい。弱者として理不尽な状況におかれている人たちのために戦いたい。労働者が連帯して不条理と戦える世の中を築きたいのである。こんなひどい世の中を未来に残したないのだ。
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