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2020年09月06日(日) もしも岸田文雄が本気ならば        ブログランキング投票ボタンです。いつも投票ありがとうございます。m(_ _)m 携帯用URL by Google Fan





 「本気ならば」シリーズもこれで最後である。結論は結局「本気じゃないよ」ということに落ち着くのだが、菅と石破を取り上げた以上、岸田文雄を無視するわけにもいかないのでこの一文を書くことにする。

 岸田文雄は広島一区選出の衆議院議員であり、1993年に初当選したという点では安倍晋三と同期である。実は岸田の父親も祖父ももと議員であり政治家一族の三世政治家である。池田勇人が佐藤栄作と袂を分かって発足した宏池会を2012年に受け継いで派閥の領袖となったわけだが、もともとその派閥の長であった宮澤喜一とは親族の関係となる。宮沢喜一の甥にあたる宮沢洋一とは従兄弟の関係になる。

 三代にわたって政治家一家だった岸田文雄にとって、総理になることは悲願だったかも知れないし、同期の安倍晋三の次は自分であるという自負もあっただろう。そのすべてが狂ったのは参議院選挙の候補者として河井案里を安倍晋三が送り込んだことであった。河井案里が当選したことによって参議院議員として現職だった溝手顕正は落選することとなった。

 河井案里の選挙戦を岸田文雄はどのように感じていたのだろうか。自民党の幹部が次々と応援にやってくる中で、現職の溝手顕正と近かった岸田文雄はそれこそ臍を噛む思いでいたことは容易に想像できる。安倍晋三が側近の河井克行の妻を当選させるために選挙資金の援助し、そのゼニが役に立ったのか立たなかったのかわからないが、結果として当選につながったことは事実である。この安倍晋三の「シマ荒らし」に対して岸田はどういう態度をとるべきだったのか。「こら晋三、ふざけるなよ!」ともっと激怒すべきだったのである。しかし、自身のキャラを「温厚な人物」としたかったのか、彼はその怒りを表明することもなかった。広島地検が選挙違反の容疑で河井克行・案里陣営を捜査している背景に岸田の支持があったのかどうかはわからない。ただそこで岸田は安倍晋三と駆け引きができたはずである。「河井克行の捜査に手心を加える見返りに自分を後継総裁に指名しろよ」くらいの交渉はできたとオレは思うのである。

 しかし、岸田文雄はそのような駆け引きができなかった。彼は安倍晋三みたいに悪になり切れなかったのだ。勝つためにはヤクザを使った選挙妨害も辞さないという安倍晋三の悪辣さと比較すれば、常識人である岸田文雄はしょせん敵ではなかったということである。

 岸田文雄に最後のチャンスがあるとすれば、河井克行の選挙違反事件がらみで「安倍晋三の関与」を明確にする証拠をつかんでそれをネタに脅すしかなかったのである。週刊誌にリークして安倍晋三を追い込んで辞職やむなしに追いつめて、そこで禅譲を迫るというのが唯一の手段だったのである。

 ここでオレはタイトルに「本気ならば」と書いたが、彼はもしかしたら本気で安倍晋三の後継総裁になれると思っていたのかも知れない。しかし、安倍晋三という男の腹黒さや悪辣さが十分にわかっていなかったのである。だからこそ菅義偉という格下の男に首相の座をさらわれることになったのだ。政治家一家の三世として、開成高校から早稲田大学、日本長期信用銀行というインテリエリートの道を歩いてきた彼が、集団就職で秋田から出てきた田舎者のたたき上げの男に敗れたのである。安倍晋三は自分と同じ政治家一族の岸田文雄ではなくて、菅義偉の方が院政を敷くのに都合がいいと判断したのだ。

 岸田文雄は甘く考えていた。自分のシマ荒らしをされてることがどんな意味を持つのか全く分かっていなかったのだ。政治家というのは選挙で勝てるかどうかがすべてである。卑怯で汚い方法でもとにかく選挙で勝たせてくれる側にしっぽを振るのである。安倍晋三に舐められたまま終わったことで彼は岸田派所属議員の信頼を失った。

 国会議員の中で「総理大臣」になれるのはごくわずかだ。多くはその志を持っても果たせないで終わる。稲田朋美や野田聖子は女性初の総理になりたいと思ってるようだが、今の状況では小池百合子の方がまだ可能性があるだろう。
 政治という権謀術数の世界で生きていくのは大変なことである。どんな陥穽が仕組まれているのかは誰にもわからない。暴力団関係者のような反社会勢力ともある程度の交際は必要になってくるのだろう。だから「桜を見る会」に招待しないといけないのである。岸田文雄の敗因はもしかしたら悪になり切れなかった甘ちゃんの敗北なのかも知れない。


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