2017年11月01日(水) |
崩れる宅地は自己責任か? |
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2週連続の台風の影響の大雨で、奈良県三郷町の住宅の敷地の盛り土が崩落して、近鉄生駒線の線路の上に土砂が流れ込むという土砂崩れが起きた。近鉄は線路上の土砂を取り除いて応急の土止め工事を行って運転を再開した。さて、問題は基礎の杭が丸見えのような状態になっていつ家ごと崩れ落ちるかわからない住宅の方をどうするかである。
斜面に盛り土して建てられたこの住宅の盛り土部分は住宅の所有者の土地、つまり私有地である。その斜面が崩れて近鉄の線路の方をふさいでしまったわけである。この場合、近鉄側は自社の所有地以外の部分について、復旧工事は土地所有者の責任で行えと主張している。仮に近鉄が工事した場合、その費用は住宅の所有者に請求するということなのだろうか。
そもそもなんでそんな脆弱な斜面だったのかということだが、これは造成業者がすでに倒産してしまっていて、どんな工事だったのかもわからないようである。オレはいつも思うのだが、住宅を造成するときにもとの地形を大きく改変したものはかなり危険である。実際に地震や洪水の時にそうした場所がまっさきに崩落したり、土石流の通り道になったりするからだ。
自然の威力は決して軽んじてはならない。台風21号では大和川が決壊寸前まで増水したが、もしも決壊していれば大阪市の南半分が浸水し、堺市や松原市、藤井寺市にも被害が及んで大水害が発生したことは間違いない。その時に川の近くの家はもしかしたら流出してしまうかも知れない。その場合、復旧工事は自己責任なのだろうか。川の近くに家を建てている方が悪いのか。それとも、絶対に洪水でも決壊しないスーパー堤防を整備できていなかった行政側の責任なのだろうか。
川の近くにも住宅が密集してるのは国土の狭い日本では普通のことである。大阪でもたとえば淀川の堤防の近くまでぎっしりと家が建ち並んでいる。家の屋根は堤防の上端よりもはるかに低いところにあるわけで、もしも堤防が決壊したら間違いなく水没するし、流れが速かったら家ごと流されるかも知れない。
オレは臆病だから「洪水なんか起きない」といくら言われてもそういう宅地は選ばないだろう。この世に絶対の安全などないし、少なくともリスクは少しでも避けたい。どうして1000年に一度のような豪雨が絶対に起きないと言えるだろうか。その確率が100年に一度とか200年に一度と言われても、今から100年安全ということを保証してくれるものではないのだ。その洪水はいきなりやってくるかも知れないのである。
昭和57年の8月豪雨で、オレの住む松原市はかなりの部分が水没した。その時静岡県にいたオレは、泥海の中に家の屋根がポツポツ浮かんでるテレビ映像を見てびっくりして家に電話をかけて家人の無事を確かめたくらいである。
日本のような地震国に住んでいれば、国内に絶対安全な場所など存在しないのである。大地震や津波がいつ襲ってくるかも知れないのだ。だからオレはこのような災害を「私有地の復旧は自己責任」という風に済ませて欲しくないし、それを公費で補助するということは間違ってないと思うのである。本来なら建設業者の方に賠償を請求するところだが、その会社が存在しないのでこのままでは住民を救済できない。だからこそ自治体や国がなんらかの支援策を示すべきであり、その結果として「日本に住んでいればいつも国が守ってくれる」という安心感を国民に与えないといけないのである。
「私有地の復旧は自己責任」という方々は、自分の家の屋根に巨大隕石が落ちてきて家が粉砕されたときに、「私有地だから住人が復旧してください」と言うのだろうか。もしもそんな悲劇が起きればどうすればいいのか。少なくとも今後起こりうる想定外の災害に対して、自己責任論で済ませて欲しくないのである。福島原発の近くに住んでいて未だ自宅に帰還できない被災者に対して「原発の近くに住むからそんなことになるんですよ」と言うことがどれほど間違ったことであるかがわかるなら、今回の三郷町の崩落も、公費と近鉄側の支援でなんとか復旧にこぎ着けてもらいたいのである。
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