2017年08月12日(土) |
日本はどうしてダメになったのか |
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かつて、就職するということは定年までその企業で雇用されることが保証されることだった。社員は社宅に住み、会社の運動会があってひとつのコミュニティーが形成されていた。会社というのはひとつの大きな家族であった。そうしたコミュニティーはどうして崩壊してしまったのだろうか。
かつては2割以下だった非正規雇用がいまは全体の半数近くまで増えてきたということも一因かも知れない。バブル崩壊後の日本は労働者の総賃金が下がり続けた。企業が利益を貯め込む一方で、労働者はどんどん貧しくなった。そして雇用は不安定になり、終身雇用が保障されなくなったという大きな変化が起きたのである。
会社が大きな家族ではなくなったというのはどういうことか。家族でない以上、企業は社員を大切にしなくなった。ヒトではなくてモノ、製品を作るための原材料のように従業員を扱うようになったのである。これはたとえば企業内で派遣社員を扱う部門が人事課ではないというあたりからもわかる。
多くの大企業が創業者一族の手から離れて、サラリーマン社長が経営するようになった。彼らにはその企業の浮沈を担ってるという責任感が欠けていたのだろうか。企業の方向性を左右するような大事な局面で失敗した判断を下したあげくに、巨額の退職金をもらって去って行くという連中が続出した。自分の手で、あるいは自分達一族の手で築いたからこそ必死で守ろうと努力するのである。そこに多くの人々の生活がかかってるから守らないといけないのである。
もっとも創業者一族の中からもカジノで会社のゼニを浪費するという馬鹿がいたので、サラリーマン社長だからダメというものでもないのだが。
オレが感じるのは、大企業のトップにいる人間の中に、高い志を持った人間が減ったということなのだ。もちろんそれはアメリカの多くの企業が四半期ごとの業績を気にしていて、株主の方ばかり見ていることと同様の現象なのだが、企業が多くの人の生活を支えている社会的存在であるということがわかってないのである。
たとえば大手コンビニチェーンはもうかってるFC店があると、その至近距離にわざと同じ系列のコンビニを出店させるのである。セブンイレブンなどがやってるこの方式は「ドミナント出店方式」と呼ばれていて会社の経営方針である。しかし、間近にライバル店ができて、しかも同じ系列の店ができると必ず売り上げは半減してしまう。もちろん元締めの方は全く損をしないわけだがFC店のオーナーは大変である。
なぜこのようなことが起きるのか。コンビニチェーンの社長にとっては、FC店などいくらつぶれてもかまわないし、倒産して経営者が首をつっても平気だからである。どうしてFC店のオーナーさんもコンビニで働くアルバイトもみんな豊かになってもらってという発想がないのだろうか。企業が社会的存在であるという大事なことを忘れて目先の利益だけを追求してるのだろうか。
大企業のトップの人格的劣化、これがオレは日本が衰退した最大の原因だと思っている。もちろんいまのグローバル化の進んだ社会の中で、海外の企業のように冷酷にビジネスライクにならないと企業は生き残れないと言う人もいるだろう。しかし、そうやって生き残ろうとした結果がいまの状況を生み出してるのであって、日本には世界標準とは違った価値観がもともと存在していたのだから、何も世界標準に合わせる必要などなかったのだ。
廃藩置県と版籍奉還によってかつてのお殿様はなくなった。いまたとえば企業が地元密着という戦略をはかり、その企業の城下町を発展させ、優秀な人材を同時に育てるということは時代錯誤だろうか。
城下町を築くどころではない。いまや製造業の多くは労働者不足に悩み、海外からの人材に頼っている。どこでも働く人がいない。東京で入ったコンビニや飲食店でも外国人ばかり働いていた。いま日本では働く人そのものが決定的に不足してるのである。元気な若者に生活保護を与え、ニートを引きこもらせてる所ではないのである。彼らもじゃんじゃん働いてもらわないと困るのだ。
働く人をどうやって増やすのか。待遇をよくしないとダメだ。働くとこんなにいいことがあると思ってもらわないとだめだ。どうすればそんなふうにできるのか。どうしたら若者が働いてくれるのか。人手不足に悩む企業は、自分達に何が欠けてるのかを理解しないといけないのである。
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