2014年01月13日(月) |
これからのATM強盗について |
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ATMの中には大量の現金が収納されている。だからそいつの中からゼニを奪おうとするのは犯罪者なら誰しも考えることで、重機で破壊するとかATMの機械ごと持ち去るとかいう乱暴な犯罪も起きていた。しかし手間取ったら警報装置が作動したりして警備員が駆けつけることになるし、この種の犯罪は短時間で手際よく行う必要があったのである。
しかし、わざと警備員を呼び出して、彼らの持つ鍵で現金収納箱を開かせてそこからゼニを奪うという方法はこれまであっただろうか。警備員が逆に襲われるなんて事態は想定されていなかったはずである。読売新聞の記事を引用しよう。
警備員脅されATM開錠、2人組が数百万円強奪
9日午前3時35分頃、兵庫県姫路市余部区上余部のJA兵庫西旭陽支店余部コーナーで、警備員(30)から「2人組の男に襲われ、ATM(現金自動預け払い機)から現金が奪われた」と110番があった。
県警網干署員が駆け付けたところ、ATM付近に消火剤がまかれ、中にあった数百万円がなくなっていた。
網干署は強盗事件として捜査。発表によると、警備員は警報が作動したため、同3時過ぎに現場に急行、周囲を見回っていたところ、突然、2人組の男に羽交い締めにされた。「金を出せ」と脅されたため、持っていたカギでATMの現金収納箱を開けると、頭から服のようなものをかぶせられ、粘着テープで後ろ手に縛られたという。男らは現金を奪って逃走。警備員は自力でテープをほどき、近くのコンビニエンスストアから通報したという。
同署によると、男の1人は黒っぽい上下、もう1人は不明という。
(2014年1月9日12時51分 読売新聞)
この事件でオレが不思議なのは「金を出せ」と言われて、そこで自分の持ってるゼニを出すのではなくて、ATMの中から出したことである。なぜそのカギを持って行く必要があったのだろうか。このような場合に駆けつける警備員がATMの現金収納箱のカギを持ってることが通常のことであり、日本全国で同じような状況であるならば、これからのATM盗は「警備員を呼び出してカギを奪う」というのが王道になってしまうだろう。
犯人が拳銃や刃物を持っている場合、警備員は普通は抵抗できずにあっさりとカギを渡してしまうだろう。別に命がけで守るべきものでもない。そこにあるのは他人のゼニであり、自分はただ巻き込まれた被害者である。ここは犯人を怒らせないように穏便に素直にするのが得策だ。そういうわけできわめて簡単にこの犯罪は成功してしまうのである。つまり今回の事件は、これからのATM強盗がどうあるべきかというきわめて明確な指針を犯罪者たちに与えたのである。
さて、ATM機を製造する側はどうやって対応すればいいのか。そもそもこのような犯罪の被害に遭ったときに損をするのは誰か。銀行にとって奪われるATM一台分のゼニなんてはした金は別に気にならないだろう。もしもATMの機械が壊されるならば新しく購入しないといけないが、カギを開けるのなら機械は無傷だからむしろその方がいいということになるかも知れない。かくしてこのパターンは銀行にとっても都合がいいのである。積極的に防止しようというモチベーションは上がらない。銀行が全く対応しようとしないから、かくして模倣犯はどんどん増えることとなるのだ。
模倣犯の中には警備員と格闘する自信がないので、不意打ちで殺害するという方法を選ぶ者もいるだろう。殺してしまえばゆうゆうとカギを奪えるということになる。あるいは警備員とぐるになって八百長の強盗事件を起こす輩が出てくるかも知れない。
これまで治安の良さを世界に誇ってきた日本では、今回のような犯罪はあまり想定されていなかったはずである。この事件の報道のために、逆に犯罪の具体的方法が明らかにされてしまった以上もはや手の打ちようがない。じゃあどうすればいいのか。警備員が襲われた時のために警備員の警備員を派遣すればいいのか。じゃあ犯罪者側はその警備員の警備員を襲う要員をさらに増員すればいいわけで結局防ぎきれないのである。なんとも物騒な世の中になってしまったものだと言うしかないのである。
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