2013年11月02日(土) |
天皇陛下に直訴した男 |
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山本太郎が園遊会の席上で天皇陛下に直訴状を渡したことが問題にされている。しかし、なぜそれがこれほどまでに世間の非難を受けるのか。それは山本太郎議員が世間から「変なことをする馬鹿」と思われ偏見で見られているせいなのか。田中正造が足尾鉱毒事件を天皇陛下に訴えたことは賞賛される行動であっても、山本太郎が福島原発の被害の惨状を訴えることは非難されるのか。オレは彼を擁護したくなるのだ。しかし、せっかくの訴えも侍従に取り上げられ、陛下の目には触れないかも知れない。恐れ多くもオレが天皇陛下の立場ならば、侍従の手からすぐにその手紙を受け取り、「必ず読むよ」と答えただろう。
佐倉惣五郎は領主である堀田氏の苛政を訴え、将軍家綱に直訴した。その訴えは認められたが、惣五郎夫妻は磔刑となる一方、その息子も死罪となってしまった。死後、惣五郎の幽霊が堀田氏に祟るようになり、結果として堀田氏は改易となったという話である。このことから「直訴」=「死罪」というふうに結びつけられ、直訴というのは多くの人々の願いを叶えるために命を賭して行う英雄的行為であると一般に思われるようになったのだが、実際は死刑になると決まったものではなく、藩主が駕籠に乗って出かける時に手紙を手渡す「駕籠訴」という行為にはお作法がちゃんと決まっていたのである。その点から考えると、山本太郎氏の行為は直訴のお作法をわきまえていないという気がするのである。
直訴のお作法はこうだ。訴人は紋付き羽織と袴で正装し、訴状は「上」と上書きした紙に包み、先を二つ割にした青竹の棒の先に挟んで持つ。天皇陛下に近づくと、斜め前方より訴状を捧げて接近する。すると侍従がこれを制止する。訴人は制止されても諦めず再度接近する。侍従はまたこれを制止する、それでも訴人が諦めずにみたび接近しようとする。そこで初めて侍従は『再々にわたるので仕方なく』として訴状を受け取るのである。そういう意味ではすぐに受け取った侍従も「直訴」の際のお作法がわかってないのである。
読売新聞の記事を引用しよう。
陛下へ手紙渡した山本議員「騒ぎになるとは…」
参院議院運営委員会は1日の理事会で、山本太郎参院議員(無所属、当選1回)が秋の園遊会で天皇陛下に手紙を渡したことについて、「極めて非常識な行為だ。天皇の政治利用の可能性もある」などの認識で大筋一致した。
議運委は5日にも理事会で対応を協議する。
岩城光英委員長(自民)は理事会終了後、山本氏から事情を聞いた。山本氏は「短時間でお伝えするのが難しいと思い、手紙にした。騒ぎになるとは思わなかった」などと釈明した。山本氏はこの後、記者団に「原発作業員の現状などを伝えたかった」と語った。
山本氏に対し、閣僚などからも批判の声が出た。
下村文部科学相は1日の閣議後の記者会見で「議員辞職ものだ。政治利用そのものだ」と非難した。谷垣法相も「天皇陛下を国政に引きずり込むようなことにもなりかねない」と懸念を示した。日本維新の会の橋下共同代表は同日、大阪市役所で記者団に対し「法律に書いてなくてもやっていけないことはわかる。陛下に手紙を渡すという振る舞いは、あってはならない」と語った。
(2013年11月1日21時35分 読売新聞)
天皇を政治的に利用し続けてきたのが戦前の政治ならば、戦後は天皇を政治の場から切り離すという共通認識ができているということなんだろうか。だから山本太郎参院議員の行為は、天皇を政治的に利用しようとしたことが「ケシカラン」ということになるわけだ。しかし、天皇が何か発言したとして内閣がそれに従うのか。そもそも政治家の連中は天皇のご意向なんて全く聞く気はないじゃないか。天皇陛下に対して失礼なことをしてるのは山本太郎参院議員ではなくて、むしろ静かに手紙を読んで山本氏の訴えに耳を傾けたかったかも知れない陛下のお気持ちを全く確かめもせずに大騒ぎしてる政治家やマスコミじゃないのか。
今回の事件について、やれ議員辞職だとか、資格停止だとか大騒ぎする連中がいるが、そういう奴らの方こそ天皇を政治利用して山本太郎参院議員を政治の世界から追い出そうとしてるのである。それはなぜか? 彼のような何をするかわからない議員がいれば他の議員は困るのである。国会議員は野党も与党もみんなお仲間みたいなもので、議場で国民向けの政治ごっこというパフォーマンスをして、行政の実務は官僚に丸投げし、働かずに報酬を得てる穀潰しどもである。その予定調和の世界の中で山本議員は異端者である。そういうはみ出し者がいることは他の議員にとって大きな脅威なのである。だからこういう機会にかこつけて排除したいのである。
なぜ天皇陛下に直接福島原発の惨状を訴えることがいけないのか。天皇が現人神だからそんな恐れ多いことはしてはならないと戦前ならば言っただろう。しかし今はそうではない。昭和天皇は人間宣言をされた。そうして民の声に耳を傾けた。山本太郎議員から手紙を渡されたとき、天皇陛下はそれを不快に感じたのだろうか。山本太郎議員が必死の思いでしたためた訴えを、やはり天皇陛下も真摯に受け止めたかったのではないか。それを侍従が勝手に取り上げて目に触れさせないというのは何事か。陛下を「見ざる」「言わざる」「聞かざる」の状態にしている状況の方が恐れ多くも陛下の御心に背いてるのではないのか。今回の事件、天皇陛下がどのように感じたのかがすべてである。勝手に他の政治家が発言することこそ恐れ多いことである。
いろんな政治家が尻馬に乗って発言し、山本太郎参院議員の行動を非難している。だからこそオレはあえて山本議員の側に立って発言したい。「よくぞやった!」と賞賛してあげたい。そして覚悟を見せてもらいたい。どんな罰でも受ける、死んでも悔いはないと。その覚悟が本気であればきっと国民は理解するだろう。ただのパフォーマンスと考えていたのならば嘲笑する、それだけのことである。
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