2013年11月01日(金) |
相次ぐ食品偽装に思う |
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阪急阪神グループのホテルに端を発した食品偽装事件は、日本中のホテルやレストランに拡大している。ふだんB級グルメしか食べないオレにはほとんど関係のない話なんだが、ぜいたくなレストランを食べ歩くことを趣味とする人たちにとっては腹立たしいことだろう。ただ、味覚というのは主観的なものである。本当はまずいのに「高級品だからおいしい」と錯覚していた人たちのその弱みをついたのが今回の偽装だったような気がする。値段を高く、雰囲気を高級にすることで本来求められる「味」という要素をごまかしていた連中は多いはずだ。
オレはホテルの宴会場での会食の時に何度か「なんでこの料理はこんなにまずいのだろう」という経験をしている。もちろんホテルの方はかなり高額な料金を設定しているわけで、それがまずいのだからそれこそ「カネ返せ!」というjひどいレベルなんだが、いちいちケチをつけるのも大人げないので「二度とそこを利用しない」という対応をするだけである。うまいまずいを判断するのは店のブランドや値段ではない。もちろん食べログに書かれた素人の無責任な批評でもない。常に自分の舌だけが価値判断の基準である。
昔読んだ小説「美味礼賛」(海老沢泰久)の中で、本場のフランス料理を日本に指導に来たシェフが、フォン・ド・ボーを作るのに「ていねいに手を掛けて作る方法」「多少風味は劣るがコストを安くして作る方法」を説明する場面があった。料理の世界でコストを意識するということをそのときに初めて知ったのだが、どうすれば利益が出るのかという熾烈な競争の中で、ずるいことをやる現場の人たちが出てくることはある程度仕方がないのかも知れない。中には仕入れ代金をごまかして着服する連中もいるだろう。高級食材を仕入れたことにしながら実はB級品で、差額をフトコロに入れるような連中もいるだろう。ただ、現場にそうした不心得な者がいても、会社のトップにいる人はそれを監視して阻止する義務がある。阪急阪神グループの場合は会社のトップがそういう方針で客をだましていたわけだからもはやどうしようもない。一番上から腐っていたのである。(だから阪神百貨店のイカ焼きはあんなに劣化したのである。)ここで無くした信頼は永久に取り戻せないかも知れないのだ。
日本の食文化である「和食」を世界無形文化遺産として登録を目指すという。それ自体はいいことなんだが、和食の要素の中にある素材を活かす部分が、このような産地偽装でかなり裏切られたという気がするのだ。九条ネギとふつうの青ネギ白ネギは違うわけで、それをごまかして高い値段をぼったくったホテルやレストランの責任は限りなく大きいのである。
こうした一部の不心得者のためにもっとも被害を受けるのは、水を一杯800円にして客から食べてない分までゼニをぼったくるような詐欺レストランではない。そういう店には値段だけで味を決めるような馬鹿しか行かないから偽装されてても気づかないからである。本当によいものを提供しようと努力してきたまじめな店がもっともとばっちりを受けているのだ。食品全体の信頼を奪われてしまったまじめな店としては、あるいはその産地としては損害賠償の訴訟を起こしてもいいくらいである。
今、相次いで過去に偽装していた罪を自首している連中に対してオレが思うのは「アホか!」という感想だけだ。今だったら大騒ぎの陰に隠れてごまかせると思ってるのか。自分たちの組織がクソだったということを白状して、それで「正直に発表した」と満足してる馬鹿はその業界から足を洗った方がいい。お詫びというのはゼニを返すことでもなく、発表して謝ることでもない。本当にうまいものを作ってそれを客に提供し、文句を言わせないことである。本当においしかったら客は文句など言わない。
食べ物屋にとってできることは、時間はかかるかも知れないがこれから何十年もおいしいものを地道に提供し続けることしか答えはないのだ。その前につぶれてしまう店も多いのだが。
美味礼讃 (文春文庫)
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