2012年07月05日(木) |
ハメこまれた人たち19 (全日空) |
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ジョイントコーポの破綻劇について
株式投資なんてクソみたいにつまらないと最近思うようになった。どうしてつまらないかというと、イカサマが横行している上に自動売買を使ったシステム取引の割合が多くを占めるようになって、過去の「板読み」と呼ばれる手法が全く通用しなくなってきているからである。日本株がこれほど割安な状況で放置されている背景には、オレと同じように考えていて株式投資を馬鹿馬鹿しく思っている個人投資家が多いからなんだろう。
最近、証券会社による増資インサイダーが次々と報道され、3大証券すべてがこのイカサマに手を染めていることがあきらかになったわけだが、増資インサイダーではなく「増資」そのものが実は証券会社の大きなシノギであり、インサイダーでもなんでもなくそこでぼろ儲けすることはルール上認められているのだ。さすがにMSCB(転換価格修正条項付転換社債)の発行なんてひどいことをやる会社は最近は聞かないが、いかなる増資も既存の株主へ大きなダメージを与えるものであることに変わりはない。
全日空の発行株数は約25億株である。3月12日には株価は263円あったわけで、その時の時価総額は概算で25億×263円=6575億円ということになる。その後日本株全体が値下がりしたこともあって時価総額は徐々に下げたわけだが、7月3日に株価は急落して224→193円となり、7月4日時点(株価195円)での時価総額は約4924億円となっている。一日に31円も値下がりしたわけで、775億円分の価値が失われたのと同じことである。
なぜこのようなことが起きたのかというと、全日空が10億株の増資を行って約2000億円のゼニを市場で調達することを発表したからである。この増資のニュースを最初に報道したのはNHKだった。7月3日の昼にNHKがこのことを報道し、それを受けて全日空の株価は後場から急落して終値では結局−31円という大幅な下げになったのである。
「増資」と呼ばれるこの仕組みはその名称からまるで資本が増えるよいことのように個人投資家に勘違いされるのだが、実際は企業の価値や信頼を著しく下げる行為である。その企業が平気で株主を裏切るクソみたいに信用ならない企業であると天下に喧伝するようなものだからだ。かつて倒産直前の日本航空がなりふり構わぬ増資を行っていたことを思い出す。
公的資金で救済された日本航空と違って、全日空は自前の資金で新しい機材を調達しないといけないわけで、通常はそれを銀行からの借入金や社債でまかなうところだがその場合は返済しないといけない。ところが増資という手法を用いれば今の株主からゼニを巻き上げて資金調達できるのである。
増資をすると100%その企業の株価は値下がりする。それがわかっていれば先に空売りしておいて、値下がりしてから買い戻せば確実に儲かる。増資するというインサイダー情報を得ることができれば、その企業の株を空売りしておけばいいわけで、最近摘発された増資インサイダー事件というのはそれを個人レベルでやったものである。
しかし、同じインサイダー取引も個人ではなくて証券会社が大規模にやることは全くの合法なのである。それは証券会社のシノギとして認められたことだからだ。株主を大事にするまともな会社はそんなことをしないのだが、世の大企業の多くは個人株主なんかゴミとしか思ってない。
NHKが昼に増資のニュースを出した時、すぐに全日空は「現時点では決定していません」というIRを出した。しかし夕方4時になってから「新株式発行並びに株式売り出しについてのお知らせ」というIRを出したのである。3時間ほどの間に急に決まったのである。思わず「あほか!」と叫びたくなるようなできごとである。そんなことが3時間で決まるわけがなく、少なくとも2週間前には決定していないといけないのである。以下に引用して示すのがその増資を伝える発表である。
ANA、公募増資9億1400万株、オーバーアロットメントによる売り出し8600万株実施へ
全日本空輸(ANA)<9202.T>は3日引け後、公募増資9億1400万株に加え、オーバーアロトメントによる株式売り出し8600万株を実施すると発表した。今回の新株発行により、発行済み株式総数(現在25億2495万株強)は最大10億株、率にして39.6%増加する
手取り概算額は最大で2110億5000万円。15年3月末までに、国際線ネットワークの拡充を主な目的として、省燃費機材であるボーイング787型機(787−8型機および787−9型機)を中心とした航空機購入を含む設備投資資金に充当する予定。
3日終値は31円安の193円。大型公募増資の方針を固めたとの一部報道が先行し、株価が急落した。
[ 株式新聞ニュース/KABDAS−EXPRESS ]提供:モーニングスター社 (2012-07-03 18:04)
NHKが増資のニュースを全日空の発表前にスクープしたのは、個人投資家を救済したいという報道側の良心か、あるいは最近の続発する増資インサイダー事件に心を痛める人からの良心のたれ込み告発があったのか、それはわからない。しかし少なくとも昼にその報道を知った全日空株主の一部は空売りすることで損害を少しでも少なくしようとしたはずである。その証拠に信用取引情報の空売り残は一気に増えている。
ただ、個人よりもずっと早く証券会社は全日空の増資情報を入手していて、すでに大量の空売りを行っていた。野村證券は6月25日時点ですでに1365万株の空売りを入れている。株価の値下がり幅を40円とした場合、5億4600万円の利益である。7月3日時点での空売り残を見ればドイツ証券やモルガンスタンレーなども参戦しているのがわかる。6月29日に大量の新規の空売りを入れていたのである。7月2日にはゴールドマン・サックスまでも売り方で参戦しているのだ。今回の増資での幹事証券(すなわち、事前に情報を知りうる立場)である野村、JPモルガン、ドイツ銀行、ゴールドマンサックスのすべてが正式発表の7月3日よりも前に空売りを仕掛けていたのである。
ただ何度も繰り返すが、これはインサイダー取引ではない。インサイダー取引は情報を知り得た個人を罰するものであり、証券会社がインサイダー情報で空売りして稼げるのは、増資を引き受けてくれることへの見返りである。証券会社は株を借りてきて空売りし、増資によって受け取った株でその借り株を返済する。そういううまみがあるから増資を引き受けてゼニを出すのであり、もしもそうしたうまみがなかったら増資を引き受けてくれる証券会社などない。このような増資ビジネスは海外の証券会社もやっていることである。
全日空が今回の増資で2000億円を仮に手に入れることができたとしよう。6月21日には全日空の株価はいったん236円の高値を付けた。そのあたりで徐々に証券会社は空売りを仕込んでいたと思われる。236円時点での時価総額は約5900億円だ。今回の増資で全日空株の価値は約40%の希薄化となるので、5900億円を増加後の株数(35億株)で割れば168円という株価になる。7月4日の終値は195円なので理論上はまだ値下がり余地があるのだ。
全日空が2000億円手に入れて、幹事証券会社が空売りで200億円くらい手に入れるとして、そのゼニは誰が負担しているかというと既存の全日空株主である。236円の株が150円まで値下がりしたとして、その86円に25億株をかければ2150億円が消えることになる。そうして既存の株主に損をさせることで資金をひねり出し証券会社がぼろ儲けする仕組みがこの「増資」という手法なのだ。しかしその増資に関する情報を証券会社ではなくて個人が手に入れて空売りをすると、証券取引法違反で処罰されるのである。なんて不公平なんだろうか。
証券会社の外務員が個人投資家に株や投資信託を勧めるとき、資産を増やしてあげたいなどとはこれっぽっちも思っていない。適当にもうけさせて資金を増やして喜ばせておいて、最後に根こそぎもっていく(オレはそれを「はめ込み」と呼ぶ)ために利用しているだけである。だって個人投資家なんて証券会社から見ればゴミクズのようなちっぽけな存在だからだ。
もしもオレがアラブの大富豪の投資顧問となって100兆円くらいの資金を運用できるならば、増資によって個人をハメこもうとしている証券会社に対して逆張りの勝負を仕掛けて、野村のような大手証券会社を倒産に追いこんでやりたい。増資の引き受けなんか絶対にやらない、本当に個人投資家のことを考えて一緒に優良企業を見守り育てていく、そんなビジネスがしてみたい。株式投資を本当に魅力ある世界に変えて、投資家の夢を叶えてあげたいと思うのだ。
全日空株の増資情報を先に得て空売りした証券会社の幹部は誰も処罰されることはない。そしてそのことを告発するテレビ局も新聞社も存在しない。オレがここで語る正義に耳を傾けてくれるマスコミ関係者などこれまで一人もいなかったのである。
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