2011年01月06日(木) |
おせちで一儲けを企んだ男 |
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食べ物屋というのはなかなか厳しい世界である。まずいものを出されて不愉快になった客は二度と来ないし、今はネットで悪評が一気に広まる。設備投資をして借金をして開店にこぎ着けたとしても、まずくて人気が出なかった店はたちまちつぶれる。そこで大切なのは「ちゃんとしたおいしいものをお客様に提供したい」という気持ちである。その気持ちが欠けた店がたちまちつぶれるのは自明の理である。
今ここに、おせち料理で荒稼ぎしようと企んだ水口憲治という男がいた。彼は「バードカフェ」という店を運営する外食文化研究所の代表取締役である。上手に安物の食材をバイトに詰めさせて、見本よりもちょっと量を減らしてごまかして、それでぼろ儲けをたくらんだことは間違いない。だってこんなことをツイッターでつぶやいているのである。
10500円のおせちを500個販売すれば、約500万円の売り上げということになる。定価21000円のおせちというのはそもそもどんなおせちだったのだろうか。彼は広告の写真でこのようなおせちを掲載していた。
しかし、実際に届いたのはこんなひどいものだった。
9つに仕切られているはずの中味は実は4つにしか区切られてない。そこに料理が申し訳程度に入ってるわけで中味はスカスカである。もしもオレが購入者なら「舐めとんかコラぁぁぁぁ!」と電話を掛けて社長を怒鳴りつけていただろう。中味が少ないだけではなくて。腐っていたり痛んでいるものもあったという。未確認情報だがクール便で送られるはずが普通便で届いたという話もある。しかも大晦日に届ける予定が間に合わなかったわけで、おせち料理無しでお正月を迎えた家も多かったのである。もっともこんなひどいモノが届けられてもかえって気分が悪いだけだが。
さて、飲食業に携わる人間ならば、大量のおせちを準備するのにどれだけの人手が必要であり、また「盛りつけ」というのがなかなかに技術を必要とする職人芸であることを知っているはずだ。そんなこともわからないで水口社長はこの企画を思いついたのだろうか。それとも注文する客を舐めていたのだろうか。
いずれにしてもこんなひどいものを送りつけていては会社の面目丸つぶれである。水口社長は全額返金(←そんなことは当然だが)の上、お詫びとして5000円のギフト券などを渡すと言っている。また社長を辞任するらしい。辞任は当然だろうし、こんな失敗をした人間はもうこの業界でやっていけないだろう。食べ物屋にとって一番大切な「信頼」を完全になくしたわけだから。
オレは学生時代に弁当屋でアルバイトしたことがある。スーパーで販売する寿司盛り合わせなどを流れ作業で深夜に完成させるという夜なべ仕事だった。髪の毛が入らないように頭にビニールの帽子をかぶらされた。「もしも食中毒を出せば会社が倒産します!」と衛生管理にやたらやかましかったことを思い出す。
水口憲治社長は「調理と詰め込みに予想以上の時間がかかり納品が遅れた」と釈明したそうだが、少なくとも彼が500個分のおせちに必要な食材がどれだけなのかということをきちっと計算していなかったことは写真のスカスカのおせちをみればよくわかる。また、9分割と4分割の仕切りは違うわけで、このオッサンが最初から手抜きおせちにしようと企んでいたことは100%間違いない。ただその品質が予想以上にひどいものだったので失敗しただけである。言い訳しても無駄である。そんな弁明をしてもよけいにさげすまれるだけということがわからなかったのだろうか。
対面の商売ならその場で反応が返ってくる。だからひどいものを出せば即座に客が不機嫌な様子を見せるだろう。しかし通販はその心配がない。多少粗末なものでも売りっぱなしで逃げることが可能である。客が怒らない程度にギリギリのラインをわきまえて手抜きすれば騒ぎにならなかったかも知れない。しかし、あまりにもその手抜きおせちは露骨だった。もはやそれは手抜きやごまかしの範囲を超えていた、詐欺としか言えないシロモノだったわけだ。
おせち料理の通販をしている業者はたくさんある。そのほとんどは良心的に見本通りのものを提供しているのだろう。しかし、一社がこんなひどいものを出したことで、他のまじめに作っていた業者までとんだとばっちりを被ったのである。おせち料理全体の占める通販の割合がどれだけなのかはわからないが、確実にその何%かは水口社長のせいで減るのである。それは確実だ。このゼニの亡者が同業者に与えた悪影響は計り知れない。
グルーポンという仕組みが日本でこれからどこまで受け入れられるのかわからない。大胆に割引されたはずの料理が、実は値引き後の販売価格でさえもぼったくりであると思わせるようなクソであった場合、そしてこんな事例が頻発した場合にこの仕組みは根底から崩壊する。その意味で水口憲治社長の責任はとても重いのである。彼はあまりにもおせち料理を舐めていた。高い値段でおせち料理を提供する老舗料亭や、百貨店におせちを納入している業者がどれだけきちっとその仕事をしているのかもしかしたら全然わかっていなかったのかも知れない。適当に仕入れた食材をバイトの若者に詰めさせればそれでOKと思っていたのかも知れない。
ただ、これはかなりうがった見方かも知れないが、今回の詐欺おせちを注文してしまった家はどこも「もう二度とこんなおせちは頼まないぞ! 来年からはちゃんと家で作るんだ」と思ったかも知れない。それによって日本の伝統が復活し、嫁姑が協力し合っておせちを完成させるとしたらそれはそれで喜ばしいことである。もしかしたら水口社長は自分が憎まれ役になることで、おせちをネットで注文する罰当たりな家庭に対して試練を与えてくれたのかも知れないのだ。もしもそうならオレは水口社長を少し見直したいのである。おそらくそんなことは100%ありえないと思うのだが。
最後に今回のお詫びについてだが、返金もお詫びの5000円も常識の範囲内である。もしも水口社長がこの業界でやり直したいと思うならば、今回迷惑をかけたのと同じ家庭に、来年は無料で最高のおせちを届けてみせればいいのである。そしておせちの上に「このおせちがまずかったらそのまま捨てて下さい」と書いておくのだ。それが本当に最高のおせちならば彼の店は信頼を取り戻せるだろう。もっともそんな立派なことができる男であるとも思えないのだが。
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