2008年10月25日(土) |
橋下知事、あなたは間違っている! |
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橋下知事は大阪府の財政再建のために私学助成の大幅削減を行うという方針を示した。さて、私学教員であるオレはこの問題の当事者の一人であるわけで、このことに関して橋下知事を「この野郎、助成金を減らしやがって!」と罵倒するのは簡単だが、実は問題は別のところにあるのだということをわかって欲しいのでこの記事を書くことにする。その前にこの勘違い満載の記事を見て欲しい。アサヒコムの記事からの引用である。
橋下知事、高校生と熱く議論 財政難訴え「皆で我慢を」 2008年10月24日
大阪府の橋下徹知事は23日、府の財政再建策で私立学校への助成を削減したことなどについて、府内の高校生12人と意見交換をした。財政難を訴えて「みんなが我慢しないと借金はなくならない」と熱く語り、府職員が止めるのを制止して、20分の予定を1時間以上延長して「本気トーク」を繰り広げた。
私学助成の削減案を知り、公立と私立の高校生らが4月に結成した「大阪の高校生に笑顔をくださいの会」が要望して実現した。まず、中学でいじめに遭って不登校になり私立に進んだ女子生徒や、母子家庭で家計を心配する私立の男子生徒らが「安心して勉強させて」と訴えた。すると、知事は「借金してばらまくのは簡単。でも5年後10年後を見据えてみんなで我慢する」「高校には全員がいく仕組みじゃない。(高校とは)別の選択肢もある」と応じた。
高校生らが「公立は定員があって落ちる子もいる。見捨てるんですか」と詰め寄ると、知事は「義務教育までは平等に扱う。その先は定員があってずっと競争。それが世の中の仕組みだと自覚しないと」と答えた。
また、無駄な道路整備などでなく教育に税金を回すべきだという女子生徒の話には、知事は腕を組んで聴き入り、「あなたが政治家になって変えればいい」。女子生徒が「それじゃ遅いんですよ」と涙をみせても、「必要か不必要かは最終的に政治判断」と返した。 次の予定があるため議論を途中で打ち切ることになると、橋下知事は申し訳なさそうに、「次もまたやりましょう」と約束した。
橋下知事が財政再建のために「みんなで我慢を」と主張することは確かに正論である。しかし、その我慢を押しつけられるのは必ずしも「みんな」ではない。たとえば府会議員の報酬はなぜ豪快に下げないのか。議会の反発が怖くてこんなところには手を付けられないのだろう。一教室あたり600万という公立高校クーラー設置費用の疑惑などは放置なのか。その問題について告発してるのはオレのこの日記くらいである。おそらく業者からのリベートが府の職員に渡ったり、口利きをした議員のフトコロにそのぼったくった600万のうちのいくらかが消えてるのだろう。無駄に使われた数十億のゼニのうちから、少しでも取り戻せばどうだ。もっともこの不正には多くの府会議員が関わっていそうだから手が付けられないと思うのだが。
もしも大阪に私学が一つもなくて、すべての定員を公立で賄わないといけないとすれば、どれだけの支出増になるだろうか。公立高校の場合、生徒納付金だけではとても運営できないので府からの持ち出しが多くなるわけで、教員の数はクラス数の倍くらいだから生徒18人あたりで教員1名くらいの計算になる。教員一人の人件費を年間600万とすると、それを18で割るわけだから約33万だ。もっとも学校にかかる経費は人件費だけではないから一人あたり50万として、生徒から徴収する学費は大阪府の公立高校の場合は年間に14万4000円だからその差額、つまり一人あたり35万円ほどは公費(大阪府のお金)で補助されているのである。ところが私学助成金は生徒一人あたりその半分くらいだろう。公立がすべての生徒を丸抱えするよりも、私学に生徒を通わせて助成金を出す方が実際は安くつくわけだ。
公立高校の入学試験には定員があり、希望者が全員入れるわけではない。公立高校に進学したかったのに不本意ながら不合格となって、言葉は不適切だがいわゆる「滑り止め」とされる私学に入学する生徒もいる。私学の授業料が値上がりすることはそうした生徒から学習の機会を奪うことであるとは私は思わない。今でも生活困窮者に対しては公費による補助の制度がある。何よりもその前に、自分の家が生活が苦しくて親に負担を掛けたくないのならば、なぜ死ぬ気で勉強して公立に合格しなかったのかとオレは言いたいのだ。大阪府の公立高校入試なんてせいぜい1.2倍くらいの競争率である。そこで不合格になるのは自分の偏差値よりもかなり上にチャレンジしたのか、あるいは志願者の中で特に成績が悪かったかということではないのか。一つの学区内にはかなりの数の公立高校がある。中学校の内申が10という優秀な生徒ばかり受験する学校もあれば、内申が2や3でもちゃんと合格できる公立高校もあるからだ。受験時に自分の成績に合ったところをちゃんと選んだら、不合格のリスクはかなり減らせるはずである。
大阪府の公立高校の中には入学者の3割近くが卒業までに辞めてしまう高校もある。卒業生の多くがちゃんと就職できずにフリーターやニートになる高校もある。そうした学校にも税金は惜しげもなく投入されている。いや、むしろそうした教育困難校により重点的に税金が使われている。もちろん教育現場にいるオレとしては、そうした学校の現場で働く先生方の苦労が大変なものであることがよくわかるし、困難な生徒を教育することをやめてしまえば、非行や犯罪が増加してもっと住みにくい社会になってしまうこともよく理解できる。しかし、納税者である大阪府民たちは、まるでやる気がなくて学校もサボりたおし、授業中も音楽を聴いていたり漫画を読んでいたりする困難校の生徒たちのために、私学よりもはるかに手厚く税金が使われてることに対して怒りを感じるだろう。一定以下の学力の生徒を切り捨てるのは易しいことだし、それがもっとも経費削減につながるのも事実だ。しかし、だからといってそうした教育困難校を廃校にすればそれでよいのか。そこに通っていた生徒は今度はどこに行くことになるのか?進学校の教師なんかは勉強さえ教えていればいいから簡単だ。真に有能な教師はそうした教育困難紺にこそ必要なのだ。しかし、条件を悪くして「教育に関して熱意があれば給料が安くても来てくれるはず!」と理想論を説かれても困るのである。
社会に於いて学校の果たす役割は、単に費用対効果の問題でははかれない側面がある。上の記事の中で生徒たちの思いはおそらくそこにあったのだろう。しかし橋下知事の価値観は「受験勉強が足りなくて公立高校に入れなかったのは自己責任」というのが根底にあるのだろう。それは橋下知事がその受験競争を勝ち抜いて北野高校に合格されてる方だからこそ「家が貧しくても受験勉強はできる」という主張ができるのだろう。だったら公立高校を減らせばいいじゃないか。公立を真の受験エリートだけの場所にして、数をぐんと減らせば経費削減は一気に達成できるだろう。その浮いた分のゼニを私学助成に回せばいいじゃないかと。もっとも公立高校の統廃合も橋下知事の方針に入ってるので、少しは問題の本質がわかってるのだろうとは思うが。
教育の現場に必要なのはゼニではなくて人材である。しかしゼニがなかったら人材は集まらない。それもまた事実なのだ。それは今年の大阪府の中学校や小学校の教員採用試験の志願者が激減していることからもわかる。「橋下知事になって給料が減らされる」ということに敏感に反応してるのである。もちろんオレもそうだ。雲や霞を食って生きてるわけじゃない。橋下知事が「大阪府の教育を立て直すために力を貸してください」とオレに頼んできたとして、オレが最初に訊くのは「ところで、契約金と年俸はどうなりますか?」ということだろう。しょせんはやはりゼニである。私学助成が削減され、私学の経営が苦しくなって給料がカットされるようになったとき、大阪府の教育はさらに末期的状況を迎えるだろう。学力テストの成績を上げたいのならば、学校現場にいい人材が集まるようにゼニを使ってくれということなのだ。一教室600万のクーラー設置工事代という死に金ではなくて、もっと生きたゼニの使い方で。
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