江草 乗の言いたい放題
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2008年08月23日(土) 失われた79年間について        ブログランキング投票ボタンです。いつも投票ありがとうございます。m(_ _)m 携帯用URL by Google Fan

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 人生の最後が近づいてきたとき、自分はどんな環境に自分を置いてるのだろうか。そのときに自分の回りには生活を共にする家族が存在するのだろうか。あるいは老人施設で自分は最後の瞬間を迎えるのだろうか。20年後、30年後の自分はいったいどうなっているのか。そんなことは誰も予想できない。しかし、予想できないからと何もしないわけではなく、人は将来のためにお金を貯めるし、年金を掛けるし、家族を築くのである。しかし、誰もがお金を貯められるほどの収入を得られるわけでもないし、誰もが家族を築くことができるわけでもない。生涯結婚しない人はこれからもどんどん増えていくだろうし、そうした人が、一人暮らしのままで年老いていくことも普通になるだろう。その中には当然のことながらホームレスという境遇に陥ってしまう方もいるだろう。

 もちろん東京や大阪にはホームレスの方のための自立支援施設がある。そこに居れば寝る場所と食事は支給される。しかし、高齢のために再就職もままならない場合、「自立」などという可能性はないわけで、だったらその次にどうすればいいのかという問題が立ちはだかる。だったら住む場所を確保して、生活保護が受けられるようにすればいいのかということなんだが、地方自治体の財政が窮乏する中で、無制限に生活保護を支給する対象を増やしていく余裕はない。その場合どうずればいいのか。このような境遇に陥ってしまうことはある意味自己責任なのかも知れない。しかし、だからといって社会はそれを放置するわけにもいかない。日本国憲法で生存権は保証されている。すべての国民は最低限の生活を営む権利がある。

渋谷駅近くで通行人2人刺されけが 79歳の女を逮捕2008年8月22日23時36分
 22日午後6時50分ごろ、東京都渋谷区の渋谷駅で女性が刺された、と110番通報があった。東急百貨店東横店付近で、通行人の20代の女性2人が刃物で刺されるなどし、救急車で病院に運ばれた。警視庁は、近くにいた女が事件への関与を認めたため、殺人未遂容疑で現行犯逮捕した。
 渋谷署によると、女は自称住所不定、無職北川初子容疑者(79)。「今週初めに施設を飛びだし、ぶらぶらしていた。金もなくなり、事件を起こせば警察が何とかしてくれるだろうと思った」と供述しているという。所持金は約6500円だった。
 北川容疑者は、同店東館の「東横のれん街」出入り口前で、都内の派遣社員の女性(26)の左腰を果物ナイフ(刃渡り約10センチ)で刺し、さらに数十メートル離れた同店西館の花店前で、神奈川県内の契約社員の女性(27)の左上腕を切りつけたとされる。派遣社員の女性は入院した。
 午後7時ごろ、現場に近いJR渋谷駅南改札口の券売機前で、警察官が事件の目撃者とともに北川容疑者を発見。持っていた紙袋の中には、血の付いたナイフと財布があったという。


 この北川容疑者は79歳、オレの父親とほぼ同年代なのである。そこでオレは彼女がこれまで送ってきた人生がいったいどんなものだったのだろうかと想像するのである。79年間のうちに彼女は結婚をしたのだろうか。子どもはいたのだろうか。もしかしたら子どもがいたけど亡くしてしまって、それでひとりぼっちになったのだろうか。あるいは誰かにだまされて、貯めたお金を奪われて生活の基盤を失ったのだろうか。そんなことをあれこれと想像してしまうのである。「何か事件を起こせば警察がなんとかしてくれると思った」と思った彼女にとって、自分の居場所のないこの世間よりも、刑務所や留置場の方が少なくとも安心して三度の食事にありつける場所だったのかも知れない。彼女が「食い逃げ」や「こそ泥」ではなくて、刃物で人を傷つけるような犯罪を選んだのはなぜか。中途半端に4,5年で出てきたくはなかったからである。彼女は自分の寿命が尽きるまで過ごせる場所を望んでいたのだろう。

 79年間の人生の中で、彼女は自分にとっての居場所を築くことがなぜできなかったのか。たとえ貧しい一人暮らしであっても、近所に親しい人がいて、自分を支えてくれる友人が居て、社会に関わって暮らしているならば、ちゃんと彼女を必要とする世界がそこにあったはずだと思うのだ。

 ニートが増えて、パラサイトシングルも増えて、ワーキングプアと呼ばれる人々も増えて、もしも将来ひとりぼっちになった時、あるいは働けなくなったときにどうなるのかという不安を抱えた人たちが増加している。この北川初子容疑者のような境遇が、今ニートをしている多くの人たちの数十年後の姿かも知れないのだ。そう考えたとき、この事件を「変なババアが起こした迷惑な事件」という形で処理することはできない。今回の問題は今の社会が抱えている状況のひとつの未来像だからである。

 人は不断の努力で社会の中に自分の居場所を確保しないといけない。それは事実だ。しかし、大企業が正社員を減らして派遣社員や契約社員、パートタイマーに置き換えていき、社会が構造的に多くの人々から「安定した生活基盤」を奪いつつある今、その雇用状況がグローバルスタンダードであるとしても、オレには納得できないのである。構造改革という名の下に多くのコストが切りつめられ、公務員や大企業の正社員以外の人々の生活が犠牲になっていく。しかもその状況は今後もさらに進行していくのである。どうして政府はこんな時代だからこそ「正社員率を上昇させよ!」と表明しないのか。日本の企業トップとしての責任を果たさず、偽装請負を開き直るクソみたいなオッサンを経団連会長にしてるのか。

 大学は増えすぎた。そうして粗製濫造された大学には将来ニートにしかなれないような学ぶ意欲の少ない学生たちが通い、その高額の授業料のために親たちの資産は食いつぶされる。そのゼニを職業教育のために使うことができればその後でもっとまともな人生を設計することができただろう。また、短大や専修学校にも、やはりおよそ働くことに適さない無数の学生たちが居る。ろくに漢字も読めず、ろくに本も読まないくせにホワイトカラーとして事務職を希望してるのである。その一方でものを造る現場では労働力が不足して外国人労働者や研修生に頼るという状況が生まれている。コンビニやファミレスは慢性的な人手不足である。しかし、そこでの労働で得られる収入は、自分一人の生活を維持するのにも不十分な金額でしかない。なんで学校教育と就職をこんなに乖離させちまったんだ。

 こんな世の中をどうやって変えていけばいいのか。オレにはいったい何ができるのか。こうして暴言日記を書き続けることで何かが変わるのか。今の政治家どもにはこの状況がわかっているのか。空前の利益を上げながらそれを労働者に還元しない企業トップたちは日本をどのようにしたいのか。あの経団連会長の便所野郎はいったい何を考えてるのか。オレは途方に暮れるのである。


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