江草 乗の言いたい放題
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2006年06月14日(水) ハメこまれた人たち・6        ブログランキング投票ボタンです。いつも投票ありがとうございます。m(_ _)m 携帯用URL by Google Fan

 ハメこまれた人たち1〜5は、初心者のための投資入門のページからそれぞれリンクしています。興味を持たれましたらそのリンク経由でお読み下さい。お勧めリンクに「僕と株と樹海の日々」を追加しました。ぜひご利用ください。



 会社四季報で住友石炭(1503)を調べると、2005年4−12月期の利益が17億円の赤字、2006年3月の予想が12億円の赤字となっていて、かなり苦しい状況にあることがわかる。もちろん配当は出せていないし、再建途上にある状況である。株価も低迷していて2ケタだった時期も長かった。この万年低位株も、なぜか昨年暮れの株高の中で上昇し、ウソみたいだが瞬間的に株価は300円を超えたこともあったのである。しかし、日経平均がジリジリと下げる中、当然この住友石炭の株価も急落(←クリックするとチャートが見られます。)した。しかし、ここが大きく値を下げる要因はそれだけではなかったのだ。

 5月25日、住友石炭の取締役会が開かれ、そこで第三者割り当てによる新株予約権の発行が発表された。この新株予約券発行の目的は、過去に発行した優先株を償却するためであった。平成14年9月、住友石炭は取引先の三井住友銀行などから金融支援を受けた。その時に発行された優先株のすべてが平成18年5月25日現在での転換価額(60円)で転換されると2億5000万株となる。住友石炭の発行株式総数は1億7400万株だからいきなり株数が2.4倍になってしまうのである。これを回避するためには償却用の原資を用意しないといけない。その資金を得るために住友石炭の取締役会は、ゴールドマンサックス証券を割当先として新株予約権発行という方法をとったのである。それによって得られる調達資金は150億円である。転換価格が100円とすれば1億5000万株、転換価格が200円とすれば7500万株の新株が発行されることとなる。

 割り当てを受けるゴールドマンサックス証券としては、時価と比較してできるだけ転換価格を低く抑えることができれば売却による利益が発生するのだが、この新株発行で住友石炭という会社の価値が150億円分増えることではないのである。会社の価値が変わらない以上、単純に考えれば現在の時価総額約400億円のうち、150億円分が会社に吸収され、残り250億円分が残った株の価値、つまり今の株主の持っている株の価値が62.5%にされてしまうということなのだ。住友石炭が150億受け取るだけではゴールドマンサックス証券には利益が発生しない。つまり、400億円という時価総額の中から、150億を会社が分捕り、ゴールドマンサックス証券が手数料分(たぶん50億くらいだろうか)をせしめ、残りが株主に残されるということが予想される。株の価値は半分くらいにされてしまうのである。

 新株予約権や、新株予約権付き転換社債の発行というのは、既存株主を犠牲にして会社が資金を手に入れる悪魔の方法である。5月25日の株価(終値)は191円だった。この金額は後に重要な意味を持ってくる。なぜ191円が重要なのか。おそらくその価格に何らかの意味を持たせる密約が存在したのだろうとオレは勘ぐっている。一週間後の6月2日には住友石炭は瞬間的に安値135円をつけた。わずか1週間で約30%値下がりしたのである。日経平均がどんどん下げていくという地合いの悪さもあっただろう。しかし、この新株予約権発行が嫌気されたのは間違いない。住友石炭を保有する個人投資家たちにとってはまさに裏切られたような思いだっただろう。しかし、物語はそこから弟二幕を迎えたのである。

 6月10日付の日本経済新聞は、経済産業省がアジアで、石炭からガソリンや軽油を精製する『石炭液化』事業の普及に乗り出す」と報道した。この原油高の中でこの研究が脚光を浴びることとなったのである。この記事を手がかりにして、関連銘柄として石炭大手の住友石炭、三井松島に大量の買いが集まった。2006年3月の時点で石炭液化関係の売り上げなど全くなく、その実用化がどれほど先でどれくらいの採算性があるのか、全然不確かな中で思惑買いだけで一気に上昇したのだ。日経平均が下げ基調で注目される銘柄が他になかったこと、100円台で個人投資家によって買いやすい価格帯だったことなどもあって住友石炭はきっちり191円(前日比+50円)のストップ高で取引を終えた。出来高は8562万株、もちろんその日の出来高ナンバー1であった。なぜこんな作為的な株価上昇が発生したのか。オレはこの背景にはきっと何かあると睨んでいる。

 この日の信用取り組みを見ると大量の空売りが入っていた。そのストップ高の中を果敢に空売りした勇気のある投資家もたくさんいたのである。その日、東証は住友石炭の信用取引規制(新規空売りの禁止)を発表した。空売りが出来ないということは、市場は買い手一色になって一気に暴騰する可能性がある。昨年秋に村上ファンドが介入した時の阪神電鉄株も同様の急上昇を見せたことは記憶に新しい。空売りした人は損失が青天井で膨らむことを回避するために損失を出してでも高値で買い戻さないといけないのだ。191円で1万株空売りした人は、もしも連続ストップ高になれば一日で50万円の損失を抱えることとなる。株価がストップ高に張り付けば買い戻すことさえも不可能になる恐れもある。その場合はさらに損失が膨らむ。住友石炭を空売りしてしまった投資家たちは、この恐怖から眠れぬ夜を迎えたのである。

 6月13日、いきなりストップ高に張り付くだろうという大方の予想に反して、住友石炭は191円という昨日の終値と同じ値段で寄りついた。なぜ寄り付きから大量の売り物が存在したのか、個人投資家たちはそれを疑うべきだったのだ。いったい誰が売っているのかということに。空売りした人が逃げられなくなる踏み上げ相場を恐れた売り方は徐々に上昇し始めた住友石炭株をあわてて買って返済した。その結果株価は237円まで上昇、ストップ高まであと4円に迫った。しかし、そこに待っていたのは200万株を超える鉄壁の売り板であった。ずっと値上がりすると信じて買った個人投資家たちは絶望してその前で売った。涙を呑んで損切りしてしまった投資家たちは歯ぎしりした。それでも値上がりを信じてその鉄壁の板に買い向かおうとする向こう見ず(←相場の世界では単なる馬鹿)は次々と含み損を抱えさせられた。

 住友石炭の株価は抵抗しながらも徐々に落下、220円、210円、200円といった節目節目で抵抗しながらも値下がりし、前日比マイナス14円の177円まで下げた後に空売りの返済買いと思われる大きな買いが入って少しだけ上昇して185円で引けた。6月12日に入った大量の空売り分はそっくり返済されてしまい、逆に6月13日の高いところで大量の信用買いが発生していたのである。一番高いところで買ってしまって含み損になった大量の犠牲者が発生したのだ。6月13日に売った人は十分安いところで仕込んで利益が出ている人であり、買った人は空売りの損切り返済と踏み上げ相場によるストップ高を期待して集まってきた人たちであった。

 そんな相場の中、今日の高値の中で売り抜けた疑いのあるのは、ゴールドマンサックス証券だ。オレはそれをほぼ確信している。東証が売り禁にするのは表向きは株不足だということだが、実際は証券会社の便宜をはかっているとしかオレには思えない。個人に売らせないようにして証券会社に売らせるのだ。ゴールドマンサックス証券がもしもここで空売りを入れた場合、後で新株予約権によって手に入る株で返済すればいいのである。ここで200円以上で確実に売っておけば、新株を引き受けた時(最初に書いた理由から必ず株価は大きく下がっている)とのその差額がすべて利益となり、しかも市場で売却しなくてもいいから値下がりするリスクもない。

 もちろんこのことに関して「本新株予約権の権利行使の結果取得することになる当社普通株式の数量の範囲内で行う当社普通株式の売付け等以外の空売りを目的として、当社普通株式の借り株を行わないことになっております。」とある。しかし、オレはそんなルールが守られるとは思っていない。この連中は何か抜け道というか卑怯な方法を持っているはずなんだ。オレのゲスの勘ぐりだと言われればそれまでだが、そうでなければなぜ今日の売り手はなぜあんなに多かったんだ?

 明日から住友石炭株は徐々に値下がりする可能性はかなり高い。3ヶ月くらい後には100円を割ってるかも知れない。しかし、その値下がりで個人投資家は利益を出すことは出来ない。必ず値下がりする株にはなぜか東証によって空売り禁止の規制が掛けられてしまう。その株を空売りして稼げるのは証券会社や借り株の出来る機関投資家だけなのである。後に残されるのは大事な資産を失った大量の個人投資家の群れである。投資は自己責任だという。しかし、こんなはめ込みが白昼堂々と行われ、情報の出し方が見事にコントロールされ、個人投資家のゼニを食い物にしてる連中が村上や堀江と違って証券取引法で裁かれることもない。新株予約権の発行も証券会社による空売りもすべて合法だからである。常に敗者となる側はわずかな資金で戦っている個人投資家である。自分だけはなんとか勝てる投資家でありたいとオレは、このゼニを腐るほど持ってる手強い連中のウラをかく方法ばかり考えているのだが、なかなか思うように勝てないぜ。


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