2005年10月17日(月) |
自分のクルマに裏切られた男たち |
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オレはこれまでに数度、クルマにキーを差し込んだままドアロックをしてしまったことがある。そのような閉じ込み事故が発生するのは、ドアロックをするときにキーを差し込んでロックするのではなく、ウインドウの内側にあるロックを押し下げて、ドアのハンドルを開いたままドアを閉めるという動作で施錠していたからである。そのたびにオレはJAFのお世話になっていた。全くどんくさい話である。
2000年夏まで乗っていたオレの愛車である日産EXAには電子式ではなく磁石式でドアロックされるキーが装備されていた。キーの頭の部分をドアハンドルのところに近づけると「カックン」と音がしてロックされるのである。こうして必ずキーを使って施錠するようになってからはキーの閉じ込みというトラブルはなくなった。今乗ってる三菱FTOはキーについてるボタンを押して開閉するようになってるので同様にその心配はない。ただ、キーに内蔵されてる電池が消耗したせいかボタンを押しても無反応になってしまい、今はいちいち鍵穴にキーを差し込んで回して施錠してる始末である。
オレがそうやって時代に逆行してる間に、クルマの技術はどんどん進み、ホンダの「レジェンド」などには厚さ数ミリのカード型「スマートカードキー」というのが登場した。こいつは利用者のポケットなどに入っていれば、キーから出る電波を自動車が受信して自動的に認証を行う仕組みだという。乗車時はドアのハンドルを握るだけで解錠され、降車時はドアを閉めて車から離れれば勝手に施錠されるというのだ。他メーカーのリモコンキーの場合は、施錠にはドアのボタンを押すなどの人手による作業が必要だが、ホンダの技術ではそれが不要なのである。荷物を持って傘をさしてるなどでポケットからキーを出すだけでも面倒な場合がある。そんなときにこのスマートカードキーならいちいちキーを出す必要もない。
しかし、機械というのは時に人間の思ってもみないようなトラブルを引き起こすのである。ホンダはこのキーを2002年からオデッセイやアコードなど新車の一部に標準装備し、希望者向けには3〜7万円のオプションとして販売したので現在では約18万3000人が利用しているという。ところが昨年後半以降、携帯電話などの電波の影響で、キーを車内に置いたままでも、降車してドアを閉めると施錠されてしまうケースが続発。いったん施錠されると中から解錠することはできず、専門の業者を呼んで開けるまで、人が車内に閉じ込められる騒ぎまで起きたのである。中に乗ってる人がロックを解除して脱出できないなんてオレには仕組みがよくわからないのである。もしもそうなら女性を拉致する誘拐犯にとってこれほど便利なクルマはない。これではまるで犯罪者御用達である。
このシステムを搭載するホンダ車には従来型のキーもいちおう装備され、このキーを使えば開けられるわけだが、カードキーの利用者は、従来型キーを家に置いていて携帯していないことが多く、出先ではなすすべもなく困りはててしまう人が多かったという。
あまりにもこのトラブルが多発したためにホンダでは9月にマイナーチェンジした「レジェンド」からは、利用者がドアのハンドルに触れなければ施錠できない仕組みに変更した。自動車の安全性には問題ないため、リコールには該当しないが、ホンダでは今春、利用者全員にダイレクトメールでトラブルが起きていることを通知したという。ただ、すでに販売された現行車種に関しては改修が困難なため、メーカーとしては注意を呼びかけるラベルをキーに張ることしかできずに対応に困ってるという。
もしもオレが自分のクルマでこのようなトラブルに陥ったらどうするだろうか。おそらく「ホンダのクルマなんか二度と買うもんか!」と怒り狂っていただろう。JRで採用されてるSuicaやICOCAのように身の回りに非接触型のICカードが増えてきたわけだが、こうしたトラブルもまた増加することは確実である。それにしても、高速道路の路側帯でパンク修理のためにクルマから降りたら閉め出されてしまったなんて場面を想像するとかなり悲惨である。いちいち鍵穴にキーを差し込んでドアロックをしている自分の時代遅れの行動も、そういう危険を回避するためには役立っていたのだなあと少し自分を見直した次第である。
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