2005年10月14日(金) |
タイガースが「神」になった日 |
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2005年12月1日、唐突に行われたその発表は日本中を驚かせた。村上ファンドによる阪神電鉄株の買い占めはついに50%に迫り、このままでは球団が乗っ取られること間違いないと思われたその最終局面で、タイガースの存続を守るために電鉄本社が打ち出した方針はなんと、タイガースを宗教法人化することだった。
宗教法人であれば株式を上場することはできない。翌日から阪神電鉄株はストップ安を続け、村上ファンドは500億を超える大量の損失を出しながら値下がりした阪神電鉄株を放出する羽目になった。顧客から預かった資金を大量に目減りさせてしまった村上氏は二度と立ち直れないほどのダメージを受けたのである。
2006年春、日本初の宗教法人チームとして阪神タイガースはデビューした。1100万人の信者を抱える、本邦最大規模の新興宗教としてタイガース教はスタートしたのである。入場券ではなく観客は「お布施」と引き換えに入場札を与えられる。甲子園球場、そこはこれまでも阪神ファンにとっての聖地だったわけだが、宗教法人化することで本当に「聖地」となったのである。そこで年間に約70試合行われるのは、野球の試合ではなく神との交歓の儀式となった。
球場に詰めかけた信者たちに、かつては選手と呼ばれた伝道師たちが最高のプレーを通じて興奮と歓喜を与え、試合の終わりには必ず「六甲おろし」と呼ばれる聖歌が合唱された。スター選手は信者にとってまさに「現人神(あらひとがみ)」となったのである。宗教法人となったタイガースは非課税の特権を得ることになり、選手の年俸がいくら上昇してもそれを上回る莫大な剰余金を生み出すこととなった。電鉄本社は甲子園球場を宗教法人にレンタルすることでその使用料という収入を得る形をとった。また、宗教法人は営利事業を営むことができないため、甲子園球場内の売店などはそのまま従来の業者の既得権益が保障されることとなった。信者のほとんどは聖地への行き帰りに阪神電車を利用していたから電鉄は相変わらず巨額の運賃収入も得ていたのである。
ただ、タイガース教信者たちは時々宗教的興奮の度が過ぎて、あちこちで暴徒となって道頓堀に飛び込んだりして物議をかもしたのである。宗教法人化してからこの傾向はいっそう強くなった。審判の中にも信者が出てきて、判定の公平性は著しく損なわれるようになった。もっとも宗教法人になったところで、もともとこのチームの熱狂的ファンにとっては何も変わることはなかった。彼らの心の中ではタイガースはとっくに神となっていたからである。
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