2005年06月26日(日) |
汚れた水をじゃんじゃん送ります! |
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高度成長期の日本では各地で工場排水による環境汚染、そして公害病が問題となった。今は同様のことが中国で起きているのである。中でも長江上流の漢江は重大な汚染地域であるという。流域には抗炎症剤や避妊薬などの原料に使われるサポニン製造工場が二百以上密集、それらがステロイドホルモンなどを大量に含む未処理排水を年間計六百万トン垂れ流しているというのだ。その結果、深刻な環境破壊が発生しているのである。化学工場や薬品工場の排水だけではなく、生活汚水やゴミ、寄生虫などによる汚染はかなり深刻らしい。
ところが中国では、その汚れた長江の水を運河で国土の北半分に運ぶという国家水利プロジェクト、「南水北調」が進められてるのだ。この構想は1950年代から練られてきたのだが、南北に3本の運河を築いて、水不足が深刻な黄河流域に運ぶのである。3本のルートのうち、東と中央はそれぞれ2007年、2010年に開通する予定である。完成すれば年間448億立方メートル(これは黄河の水量に匹敵する)の水を運ぶというかなり壮大なプロジェクトなのだ。
さて、そうやって運ばれる水がちゃんと使える水なら何も問題はない。ところがさまざまな化学物質で高度に汚染された水が運河によって運ばれてくるのである。しかも、この国家的プロジェクトにかかった費用が水道代に上乗せされるのでかなり水道料金も値上がりするのである。この杜撰さはまるで日本みたいである。もっとも中国のような一党独裁国家では国家プロジェクトを批判することはタブーであり、この「南水北調」計画に逆らうことは許されないのである。今から工場排水への規制を強めたところですでに河川は十分に汚染されているし、地下水まで汚染されてしまってる以上もうどうしようもない。
長江に建設中の三峡ダムにしても同様だ。結果的に多くの文化遺産が水没することになるわけで、三国志ファンのおれとしては白帝城や孔明が築いたという石陣が水没するのはあまりにももったいないと思うのだが、国家の発展のためにはくだらない歴史オタクの興味なんかどうでもいいというのもよくわかる。しかし、この「南水北調」計画、どうも怖ろしい結果しか予測できないのである。水道水に有害な物質が大量に溶け込んだり、流域のあちこちを深刻に汚染しながら国中を荒廃させる悪魔のプロジェクトに思えるのである。日本の先端技術の助けを借りないとどうしようもないだろう。
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