2005年03月28日(月) |
それを「ひき逃げ」と呼ぶのか? |
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オレが高速道路を走る意味は、歩行者がいないので安全だからだ。運転していてもっとも怖い存在は実は歩行者である。日本では彼らは道路交通法の枠外に存在するかのように傍若無人な振る舞いを路上で行うことが多く、歩行者の多い道路を走るドライバーはぶつからないようにと極度の緊張を要求されるのである。
その安全なはずの高速道路で、まさか前を走る観光バスの窓から人が落下してくるなんて想像することは絶対に不可能だ。オレは観光バスの後ろを走るときに、窓からの落下物を警戒して車間距離をとるなんてことはしたことがない。もう20年近く前のことだが、中国縦貫道で交通事故があってクルマから放り出された人が分離帯を越えて対向車線に落下し、それをはねてしまったドライバーが業務上過失致死で訴えられたことがあった。馬鹿裁判官がそれを一審で有罪にしたが、その後控訴審で確か無罪になったと記憶している。
東名高速道路で真夜中に観光バスから転落した小学6年の女児が後続車にはねられ死亡した事故で、県警高速隊はひき逃げした車両の割り出しを進めているという。複数の車両にはねられたと見られ、転落を目撃したトラック運転手の証言や、Nシステム(ナンバー自動読み取り装置)などから関係車両を捜索中である。事故現場はIC付近で明るく、転落を目撃した運転手はすぐに落ちたのが人だと分かり警察に通報したという。観光バスの後ろ約20mを走っていた乗用車はとっさに急ハンドルを切ってはねずにすんだとか。これはお見事である。同じ状況で自分が避けられる自信は全くない。
時速100キロでは1秒間に約28mも走るのだ。0コンマ何秒かの判断で人が落ちたことに気づき、瞬時に人を避けたことの方が奇跡である。普通のドライバーにはそんな瞬間的な反応は無理だ。オレも過去に一度、目の前に小学生が飛び出してきて、急制動で停止したクルマがほぼ横向きに半回転したことがあるが、もしも避けきれずにその小学生をはねていたら人生が大きく変わっていたはずだ。少なくとも今の仕事は辞めていただろう。オレはとにかく歩行者が一番怖いのだ。
女児をひき逃げした複数のドライバーは、まだ誰も名乗り出て来ない。各社の報道は完全に「悪質なひき逃げ犯」という姿勢である。正直に名乗り出れば情状酌量の余地もあっただろうが、こうして時間が経過すればますます窮地に追い込まれてしまうことになる。それでもオレは、このひき逃げ犯たちに同情する。真夜中に100キロ近い速度で走っていて、落下物があればそれをあざやかにかわしながら走るテクニックをすべてのドライバーに求めるのは無理だ。亡くなった女児のご両親の心境を思えば死者にむち打つような発言はしたくない。しかし、敢えて言うならば、やはり窓から落ちてしまったのはあまりにも本人の過失が大きすぎるのではないのかと。「窓から身を乗り出すな」なんて注意をされるのはせいぜい小学校低学年までだ。
目の前に落ちてきた人のために「ひき逃げ犯」になってしまったドライバーたちにオレは限りなく同情するものである。そして、運転しながら自分の身を守るとはどういうことなのかと、改めて考え込んでしまうのである。
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