2005年03月17日(木) |
ハメこまれた人たち |
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ありがとうございました。3月16日深夜、日記が100万アクセスを記録しました。これからも連続更新と、一日1万アクセスを目指して精進していきますのでよろしくお願いします。今回の日記は100万アクセス記念ということで、いつもの倍の長さの超大作になっています。
水産大手のマルハグループ本社は、魚を中心とする業務に経営資源を集中するため、砂糖事業からの撤退を決めた。これにともない、マルハ子会社で砂糖業界5位のパールエースの子会社、塩水港精糖の株式24%を、三菱商事に譲渡する。同時に、塩水港精糖はパールエースの営業権と同社株9000株をマルハから買い受け、マルハは砂糖事業から撤退する。塩水港精糖は三菱商事との提携を資本面だけでなく業務面でも行い、砂糖業界での競争力向上を目指すという。
製糖業界は再編が進んでいる。業界1位の新三井製糖は台糖(スプーン印)と4月1日に合併が予定され、両社の国内生産シェアを合計すると29%を占める。昨年の4月にこの合併が発表されてから次の動きがどうなるのかオレは予測をたてていたのだが、次に起きたのは業界第2位の大日本明治製糖を傘下に持つ三菱商事が、業界第5位の塩水港精糖に資本参加するという動きだった。両社のシェアを合わせると22%となり、新三井・台糖連合に次いで業界第2位という規模になる。
さて、投資家のオレは2月から塩水港精糖の株価を監視していた。かつては2610円まで値上がりしたこともある伝説の仕手株である。長く沈黙を続けてずっと200円台前半で出来高も少なかったこの銘柄が、1月下旬から上昇し始め、2月2日には前日比+64円と急上昇してきたのだ。「一体、何が材料なのだろうか?」バイオ関連で、しかも低位材料株という当時物色されていた二つの条件に確かにあてはまる。そして、大ヒット中のサプリメント、コエンザイムQ10の吸収力を高めたり、制がん剤タキソールの水溶化に成功しており、血糖値上昇抑制作用のあるコタラヒムの開発という期待材料もあった。
その上昇を見つつ、いったん400円台を付けてから下げ始めたこの銘柄に対して、オレは空売りという戦術で約30万の利益を得て、さらに大きく空売りをすべく2月25日を迎えた。その日、帰宅してパソコンで証券会社の取引画面を見たオレは呆然とした。自分が昨夜予約注文で入れていた空売りの指し値があっさり突破されて、+80円というストップ高で上昇し、一日でオレは400万の含み損を抱えてしまったのである。ストップ高になった理由は、昼間に「抗ガン剤タキソール水溶化に成功」というすでに投資家には周知のはずのニュースが流れたことだった。
その後も株価は上昇を続け、一時は500円を超えた。もしもこのまま株価が2000円、3000円と上昇すればオレは1億円以上の損失ということになってしまう。そうなってはたまらないので、とりあえずこれ以上含み損が増えないように空売りしていた一部を損切りし、売りと同額の買い建てをすることでリスクヘッジを行って様子を見ることにした。少し下げれば買い増しして、それを売ってはわずかな利益を確定するということを繰り返して持ちこたえた。いつかこの銘柄が急上昇した材料が明らかになる。それまで持ちこたえればなんとかしのげるはずだとオレは粘り強く耐えた。
それにしても上昇の勢いは強い。なぜこんなに上がるんだ。集めた情報から推理して、どうやらいくつかの投資顧問や情報サイトがこの銘柄の買いを推奨しているらしいことはわかった。目標価格を1000円以上、強気で買えと勧めてるところもあった。ただ、オレが気になったのは、あまりにもキレイに作られた株価チャートだった。5日上げれば3日下げるとか、高値を更新した日は終値が前日比マイナスになるとか、意図的に作っているとしか思えない動きはかなりオレには不審だった。「誰が操作してるのか」ただ泡沫投資家のオレにとっては、そうした作られた動きに乗っかって売買することで確実に自分が利益を得るという戦略しかなかった。オレは必死で日々の動きを予想した。
だんだんこの銘柄に関するオレの株価予想は細部まで的中するようになり、最近の1週間に至ってはほとんどオレの思った通りの動きをしていた。そしてついにXデーがやってきた。3月15日夕刻に上記の三菱商事による資本参加のニュースが流れて、隠された材料の全貌が明らかになったのである。翌16日は仕事が休みだったので、オレは寄りつきから株価を監視していた。ニュースに飛びついて買いで入る個人投資家の成り行き買いで上昇した所に、すでに十分に利益を得ている仕手筋の売りがぶつけられ、わずか数分ではめ込みは終了した。高値519円、しかし終値は482円、前日比マイナス17円。明日からは材料もなくなってゆっくり株価が下降し、もとの水準に戻っていくのだろう。高値づかみして取り残された投資家達を尻目にして。
さて、この相場を仕掛けたのはいったい誰なんだろうか。その答えは、一番得をしたのは誰かということを考えればいい。1月初めの株価水準だと、塩水港精糖は3500万株に210円を掛けてわずか73億5000万円という時価総額だったのだ。それが3月15日の高値527円で計算すると184億4500万円である。三菱商事が取得したのは24%の株だから、時価で約44億2680万円になる。ところが値上がり前ならこの24%取得に必要な費用はわずか17億6400万円で済んだのである。もしも直近の価格で買わされたのなら、26億6280万円も高い買い物を三菱商事はさせられたことになる。マルハは所有するすべての塩水港精糖株を売却しても得られなかったはずの金額を、値上がりのおかげで半分売るだけで手にしたのである。
ここからはオレの単なる憶測に過ぎないので狂人の戯言だと思って聞いててもらいたいのだが、この動きは、業界再編の情報がマルハ関係者から仕手筋にわざとリークされてその結果起きたような気がしてならないのだ。所有する塩水港精糖株を少しでも高く三菱商事に売りたいために、意図的に情報を漏らして株価を上げさせたのではないだろうか。はめ込まれたのはいったい誰か。上がると信じて買った多くの個人投資家と、三菱商事の買収担当者であるのは間違いない。しかし、投資はあくまで自己責任である。そして、すべての流れを読んで高値で売り抜け、空売りを浴びせたこのオレもまた悪党の一人である。
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