2004年11月24日(水) |
ハリー・ポッターと在庫の山 |
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オレが通勤帰りに時折立ち寄る書店にハリポタ第5巻「ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団」が入荷したとき、畳一枚分くらいの面積の平台の上に山のように積み上げられたその量にオレは度肝を抜かれたのである。「いったい何百冊あるんだ!」と。しかし、その本の山はいつまで経っても本の山のままで、書店の入り口前の一番目立つところを占拠していた。オレはそれをみてなんとなく思っていた。「さすがに今度はもうそれほど売れていないのじゃないか」それほど売れていないということはなく、200万部以上はやはり売れたという。しかし、発売元の静山社では初版290万部も発行していたのである。その差が売れ残りとなって今全国の書店を苦しめているのだ。
大手書店のジュンク堂では全国23店舗で約2万部を仕入れたが売れたのは7割程度だという。ここで問題になるのは、ハリポタは通常の本のように返品可能な「委託販売」ではなくて、書店の「買い切り」なっており、売れ残りの損害は書店がかぶらなければならないのである。仮に売れ残りを70万部として定価の4200円をそれに掛けると29億4000万円になる。ただでさえ苦しい書店業界にとってかなりの痛手なのである。
「ハリポタ」が買い切りになったのは第四巻からである。従来の委託販売では返品可能ということで大きな本屋が大量に注文を出してしまい小さな書店にまで本が行き渡らなかった。書店側の要望を受けて取次会社とも相談して買い切りに切り替えたと出版元の静山社は説明してるが、関西人のオレの感覚では「こいつ、足元を見やがったな」である。本屋にしてみれば売れる本はノドから手が出るほど欲しい。こんなに大量の本を無理に仕入れなければならない何らかのカラクリがどこかに存在したとオレは勘ぐってしまうのである。
静山社の松岡佑子社長は、「クリスマスまでにたくさん売れるように期待しています。新聞広告などで私たちも応援したい。」と語っているそうだが、実際にこの第五巻がよく売れたのは発売直後だけで、第四巻は8週連続で第一位だったが、五巻は2週間しか一位が続かなかったらしい。これまでずっと読み続けてきたマニアはみんなもう買ってしまったあとである。今の在庫の山を一掃するには、老人やオッサン、まだ文字を読めない赤ちゃんなど新たな読者層を開拓しないと無理なのである。
それにしてもこれまでの4巻も含めていったい静山社はいくら儲かったんだ。4000円×1000万部として400億円! これはやはりたいした金額なのである。オレを校正係に採用してそのおこぼれにあずからせてくれ。なんなら翻訳のゴーストライターになってもいいぜ。
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