2004年10月28日(木) |
神よ、そのおさな子を守りたまえ! |
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あの崩れた岩と土砂の総量はいったい何千トンあるのだろうか。新潟県中越地震で押しつぶされた車と岩のわずかなすき間で、2歳の男の子は生きていた。新潟県小出町の主婦皆川貴子さんら母子3人が巻き込まれた長岡市の土砂崩れで、長男の優太ちゃん(2歳)は10月27日午後、レスキュー隊員の手で奇跡的に救出されたのである。地震発生からなんと92時間後のことだった。
土砂に埋まったワゴン車の中にレスキュー隊員が声をかけたところ、「あー、うー」というかすかな反応があった。「本当か」「まさか」と驚きの声をあげた隊員たちは、すぐに作業に取りかかった。巨岩に押しつぶされたワゴン車の周りの土砂をスコップなどで慎重に取り除くと、横倒しになったワゴン車の底部と岩の間にできた幅50センチ、高さ1メートルほどの空間に、優太ちゃんが立っているのが見つかったという。後部座席に乗っていた優太ちゃんは自力で車外に這い出してこのすき間に入っていたと思われる。
トレーナーに紙おむつだけという姿で助けられた優太ちゃんは、隊員達の手でリレーされるように担架に乗せられてヘリコプターで運ばれた。長岡赤十字病院の鳥越克己・小児科部長は「助かったのは奇跡に近い」と語った。体温が低下し、脱水症状も見られ、頭にも15―20センチの傷があったが、検査の結果、骨や内臓に異常はなかったという。
搬送直後は、意識がもうろうとしているのか泣き声を上げることもなかった。ただ、ベッドで手当てを受けている時、そばにいた看護師の女性に「ママ」と呼びかけたという。父親の学さんとはこの病院でやっと再会できた。
母親はハンドルにうつぶせになった状態でほぼ即死だったと推定される。土砂崩れに巻き込まれるその瞬間に、母は何を思ったのだろうか。何が起きたかもわからぬままに死んだのだろうか。いや、そんなはずはない。死の直前のその一瞬に母はせめてわが子の助かることを祈ったのだと、その祈りが通じてこの奇跡が起きたのだとオレは思いたいのだ。
2歳の幼児は一日に1000CCの水分を必要とする。岩とクルマのすき間で、水もなく寒さに耐えてまる4日近い時間を耐えることは体力のある大人でも困難なことだ。多くの犠牲者を出した新潟県中越地震の報道の中で、ただ一つ胸をうたれたのが、この優太ちゃん無事救出の報せだった。この奇跡の生還を果たしたおさな子が健やかに回復することを祈っていたい。
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