2004年10月23日(土) |
九州で一番遠くてへんぴな場所 |
携帯用URL
| |
|
母が十年ぶりの里帰りをすることになった。母の郷里は鹿児島県の坊津町である。母はそののどかな漁村で戦前戦後の混乱期を過ごした。高射砲が山の上にあった関係で艦砲射撃を受けたこと、入り江の対岸に見える集落が空襲で火の海になったこと。敵機来襲の度に山に逃げ込んだことなど何度も聞かせられた。沖合で大きな軍艦が沈んで大勢の人が漂着したという話も聞いた。(それはもしかしたら坊の岬沖合で沈んだという戦艦大和のことだったんじゃなかろうか)
小学生の頃はお盆になると家族で帰省して、一日中海で泳いだりして過ごしたことを思い出す。ただ往復の旅は本当に大変で、大阪から夜行の急行とローカル線を乗り継いで向こうに着くまでには20時間以上かかったのである。
さて、今大阪から鹿児島へ行くとなれば普通は飛行機だ。伊丹空港→鹿児島空港(70分)で片道20800円である。しかし、オレの老母は飛行機が大嫌いなのである。落ちるのが怖い!という情けない理由だ。となるとJRの九州新幹線で行くことになる。ヤフーの路線情報で検索すると新大阪→鹿児島中央間は新幹線の特急料金を含めて21300円で行けることがわかった。なんと、飛行機の方が安いのである。こんな場合オレだったら絶対に飛行機で行くぜ。
とりあえずオレは旅費くらい太っ腹して親孝行したくて、仕事帰りにJR天王寺駅に立ち寄り、大阪・鹿児島中央間の往復の乗車券と特急券を買い求めることにした。みどりの窓口で購入申込書を記入すると、「割引の安い切符がありますよ!」と駅員が親切に教えてくれた。
せっかく高い正規料金を支払おうという律儀な客が来たのに、なんて商売に不熱心なんだ!
でもオレにとってはかなりラッキーなことである。さっそくその割引切符について説明してもらった。それは九州往復割引切符とかいう名で、大阪・鹿児島中央間の場合は往復31200円という安さで新幹線の指定席まですべて含まれるという。その代わり途中下車できないということだった。一万円近く安くなるということでオレは迷わず駅員のお薦めに従った。
しかし、鹿児島までたどり着いてもまだまだ先は遠いのである。そこから坊津までは指宿枕崎線というローカル線がある。距離は90キロ足らずなのに、2時間半もかかるのだ。博多から鹿児島へ行くよりも時間が掛かるのである。坊津へはさらにそこからバスに乗り換えて30分かかる。なんて遠いんだ。オレは都会で暮らす幸福を改めて思うのだった。
前の日記 後の日記