2004年03月06日(土) |
それを「キャベツ焼き」と呼ぶな! |
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その食べ物は、大阪梅田の阪神百貨店地下二階の混雑するイカ焼き売り場の近くにひっそりと存在した。イカ焼きにはいつも長蛇の列ができていたが、その食べ物は待たずに喰うことができた。まだ大学生だったオレは、梅田に立ち寄るたびに必ずその店でその食べ物をおやつ代わりに食った。その小さなお好み焼き風の食べ物は「洋食焼き」と呼ばれていたのである。
京都の銀閣寺道に、「一銭洋食焼き」という名前でよく似た食べ物を提供する店があった。日本にしかないものを「洋食」と呼ぶのも変な話なのだが、「ソース味の食べ物=洋食」と思われたことでのような名称が定着したのだろう。
オレは昭和一桁生まれの父親に訊ねてみて、その呼び名が戦前から用いられた由緒ある名称だということがわかった。今広く普及しているお好み焼きの方が実は後から発生した食べ物であり、その原型はおそらくこの一銭洋食焼きだったのだろう。
ある日、オレはJR天満駅近くにある菊水という店でお好み焼きを食おうと歩いていてふと立ち止まった。大勢の人々が「キャベツ焼き」と書かれた露店の前に群がっていたのである。なんと背後ではテレビ局のスタッフがカメラをかまえていた。野次馬根性丸出しでのぞき込んだオレがそこに発見した物体は、オレのB級グルメ分類方法では紛れもなく「一銭洋食焼き」に所属するように思えた。
なぜ伝統的な名称を用いずに「キャベツ焼き」などという恥ずかしい名前で呼ぶのだろうか。試しに一枚買って食べてみたが、それはまぎれもなく「一銭洋食焼き」の味なのである。勝手に名前を変えないで欲しいのである。それとも「一銭洋食」の方は商標登録されていて、他の店が使えないためにやむなく「キャベツ焼き」と呼ぶのだろうか。もしもそうなら、普通名詞を勝手に商標登録する卑怯な店には絶対行かないのである。
長野県で諏訪湖の花火大会を見たときに、露店でお好み焼き風の変な食べ物が売られていた。回転焼きを焼くへこんだ銅板(?)を使って、そこでミニサイズのお好み焼きを焼いているのである。その変な食い物は「大阪焼き」と呼ばれていた。とりあえず食べてみたがまずく、オレは二度と喰わないことを確信した。残念ながら、そんな食い物は大阪にはない。
トルコにトルコ風呂(その昔、ソープランドはこう呼ばれた)などなかったように、大阪に大阪焼きなど全く存在しない。キャベツ焼きも含めてこんな間違った名称はいますぐに廃止してもらいたいぜ。
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