2003年12月17日(水) |
なぜ生きてるうちに死刑にできないのか |
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もし戦後の三大犯罪者をあげろと言われれば、オレは迷わずこう答えるだろう。オウムの松本智津夫、池田小学校乱入の宅間守、そして帝京大副学長の安部英である。とりわけこの三人のなかでもっとも多くの人を殺し、これからも死なせることが確実なのは最後にあげた安部英である。薬害エイズ事件という究極の医療犯罪の結果、数千人の血友病患者が血液製剤によってHIV感染したからだ。
アメリカで使用禁止になって廃棄処分されるところだった非加熱製剤をタダ同然でミドリ十字に輸入させ、厚生省の郡司課長(その後東大教授)と組んで大儲けした行為に対する罰は死刑以外にありえない。彼らの罪状は起訴された業務上過失致死罪などではなく、未必の故意による殺人罪である。ところが一審の東京地裁は安部英被告を無罪とした。もちろん控訴されたが、この長引いた裁判が、果たして彼が生きてる間に決着がつくのかオレは心配だったのである。たとえ一日でもいい。彼を「殺人罪」という罪状で収監することができれば奪われた多くの生命への償いとなっただろう。
ところが12月16日、弁護側は老人性痴呆症による心神喪失の疑いがあるとして公判停止を申し立てたのである。精神鑑定の結果次第では今後訴追されないこともありうる。長すぎた裁判は最悪の結果にたどり着いたのである。
たかだか数万のゼニのために人を殺す路上強盗と、数千万のゼニのために肉親を殺す保険金殺人と、数十億のカネのために不特定多数を殺す国家的医療犯罪と、(付け加えるなら石油や利権のために市民を殺す戦争と、)比較したところで罪に軽重はない。どれも等しく「殺人」の名の下に裁かれなければならない犯罪だ。ところが医療犯罪はきわめて軽い罰でしかなく、戦争などは正当化さえされてしまうのだ。
有罪判決を受けたミドリ十字幹部は土下座してHIV感染者やその家族に謝罪した。(土下座で死んだ者が生き返るわけでもないのだが)ところがその指導的立場にあったはずの安部英教授や郡司課長は一度も謝罪せず、事実を明らかにすることもせず、開き直って自分たちの行為を正当化しているのである。ゼニのために多くの生命を犠牲にした行為を、人間として心に恥じるところはないのか。日本人はいつからこんなに卑怯で情けない民族になってしまったのか。同じ日本人としてオレは悔しくてならないのである。
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