2003年09月26日(金) |
ナマ身の患者で手術の練習をするな! |
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東京慈恵医大付属青戸病院で昨年、前立腺がん摘出の腹腔鏡手術を受けた千葉県男性(60歳)が死亡した事故で、警視庁捜査1課と亀有署は25日、手術を担当した泌尿器科の医師3人を業務上過失致死容疑で逮捕した。斑目容疑者は執刀医、長谷川、前田両容疑者は助手として昨年11月、男性に前立腺摘出の腹腔鏡手術をした際、止血や輸血が不十分だったため大量出血となり、低酸素脳症による脳死状態にさせ、同年12月8日に死亡させた疑いである。
なんとこの3人は、この手術を行うのは初めてだったのである。患者を使って手術の練習をしたようなものである。経験のある指導医が立ち会うこともなく、より容易な開腹手術をするという選択肢も彼らにはなかった。それでは練習にならないからである。3人の容疑者らはマニュアルを見たり、医療器具の使い方を業者に聞きながら手術を進めていたという。手術をしながらそこで実地に勉強していたのである。全くひどい話である。
たとえ手術の練習であっても、うまくいけば誰も練習とは気づかないだろう。しかし、失敗して患者が死んでしまったら取り返しがつかないのである。この手術を許可した診療部長は斑目容疑者らに「腹腔鏡手術をしたい」と相談された際、「熱意にほだされて許可した」と供述しているという。手術って、熱意でやるものかね?そんなものより大事なのは経験と確かな技術だろう。医療費に対する締め付けが厳しくなる中で、より多くの診療報酬をかせぐためにより高度な医療技術を自らの能力も顧みずに駆使しようとして失敗した悲劇がここに存在する。
1980年、埼玉県所沢市の富士見産婦人科病院で、営利目的のために正常な子宮や卵巣を次々と摘出するというひどい事件があった。健康な女性が医師資格を持たないニセ医師である理事長の診断により次々と子宮ガンや卵巣ガンと診断され、摘出させられていたのである。裁判の結果、被害を受けた患者への損害賠償は認められたものの、医師たちが傷害罪で立件されることはなかった。あれから23年、果たしてこのような悲劇は完全になくなったのだろうか。医療を患者の立場を最優先という原則を忘れた医師がいる限り、オレは安心できないのである。
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