2003年04月13日(日) |
受難! メソポタミア文明の秘宝 |
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第二次大戦の時、ドイツ軍がパリを占領する直前にルーブル美術館の収蔵品などはいち早く疎開して難を免れていた。蒋介石率いる中国国民党軍が毛沢東の共産党軍との戦いに敗れて台湾に逃れたときにも大量の美術品を持ち去っている。国家の財産としての金銭的価値というよりは、その国の文化の象徴として政治指導者はそれらのモノを守らなければならなかったのである。
逆に破壊することで政治的な主張を行う場合もある。アフガニスタンのバーミアンの石仏をタリバンが破壊したことはその一例だが、その行為は「こんな野蛮な連中はやっつけろ」とアメリカのアフガニスタン攻撃を正当化する一つの理由にされてしまった感がある。
さて、市民による略奪が止まないバグダッドでは、市民数千人がイラク国立博物館に押し入りメソポタミア文明の秘宝を跡形もなく略奪してしまった。盗まれたのは黄金のたて琴や金のネックレスなど少なくとも17万点で、被害額は金銭での換算不能である。いずれ闇のルートで日本にも流出して、なんでも鑑定団の番組に「メソポタミア文明の秘宝」として登場するのだろうか。
病院の設備が根こそぎ略奪の被害を受けて機能を失ったことにもあきれたが、国家の魂である秘宝まで略奪の対象にしてしまうこんな情けない連中に「民族の誇り」を求めても無理だ。イラクという国家を解体して、北部はクルド人の国に、南部の油田地帯はクウェートに併合というふうにしてしまった方がいいのではとさえ思える。
ただ、振り返って自分たちの国を思ったとき、果たして日本では守るべきモノは守られているのか? 運良く第二次大戦で空襲を逃れた京都や奈良の寺社・景観がちゃんと守られているとはとうてい思えない。庭園の借景のど真ん中に巨大なマンションが出現し、投資目的の醜いマンションが至る所に建てられて街並みをぶちこわす。略奪という形ではないにしろ、これも考えれば一つの「文化の象徴の破壊」に思えてしまう。アメリカと同じ生活様式、アメリカと同じ食い物に支配された今、日本文化なんてとっくに消滅してしまったのかも知れない。不祥事の責任をとって切腹もできない恥知らずな政治家ばかりだしなぁ。
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