2003年01月06日(月) |
林真須美の死刑と工藤加寿子の無罪 |
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憲法38条1項は「何人も、自己に不利益な供述を強要されない」と規定し、刑事訴訟法198条2項は「前項の取調に際しては、被疑者に対し、あらかじめ、自己の意思に反して供述をする必要がない旨を告げなければならない。」と規定している。主にこれらの条文を根拠として被疑者・被告人の黙秘権は保障されている。この黙秘権を行使した二人の女と言えば、和歌山毒カレー事件の林真須美と、城丸くん誘拐殺害事件の工藤加寿子である。しかし、二人に下された判決は死刑と無罪という正反対だった。
二人に共通するのは、「状況から考えて犯人である可能性が極めて高い」「動機の立証が不十分」ということである。オレはいつも思うのだが、なぜ日本の裁判ではこの動機というものにこだわるのだろうか。たとえば池田小学校に乱入した宅間守にどのような動機を語らせたいのか。「犯罪が行われた」「犯人はこいつだ」それだけで十分ではないのか。無理に動機を求めるから「人を殺してみたかった」などとほざく馬鹿が発生するのだ。
城丸くん事件で札幌高裁は工藤加寿子被告に無罪を言い渡したが、判決理由の中では死亡させた事実を認定している。長期間にわたり遺体を保管し、焼損した遺骨を隠匿していたことから、死亡させた疑いが強いが、殺意を持って死亡させたと認定するには合理的な疑いが残るという理由なのである。裁判所は黒か白かを決着づける場所だと思っていたが、この判決理由を読む限り、「灰色だから無罪」ということなのだ。殺人罪の成立要件には殺意が必要というわけだ。過失致死罪や死体遺棄罪の公訴時効はすでに成立している。
城丸くんの遺体が発見されるきっかけとなった、工藤加寿子の当時の夫の焼死事件だが、夫の和歌寿美雄さんには1億9千万の生命保険が掛けられていたそうである。この保険金に関して保険会社は支払いを拒否し、後に工藤加寿子は請求を取り下げている。しかし、それだけの金額の生命保険を掛ければ月々の掛け金はいったいいくらだったのか?そのあたりにも大きな疑惑は残るのである。いわゆる「ゲスの勘ぐり」というものだが。
最後に付け加えたい。工藤加寿子は札幌地裁に対し1160万円の刑事補償を請求し、地裁はその請求を認め刑事補償928万円と弁護士費用250万円の支払いを命じた。なお城丸君の遺族は工藤加寿子への民事訴訟による賠償請求を断念している。
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