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| 2004年06月05日(土) ■ |
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| 名門校の光景 |
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今日は、相方くんと四国遠征へ。明石大橋を渡り、タマネギ畑を横目に淡路島を横断し、鳴門大橋を渡り、一路香川へ。相手は県内の某名門校。今はそれほど強くないようだけど、「あ、やっぱり名門校だな」と思う光景があった。
1,うどん屋さんで
第一試合が終わったあと、保護者さんオススメの近所のうどん屋へ行った。午後3時。カウンター10席程度、テーブル3つほどの小さなその店は閑散としていた。2人で店に入り、カウンターの腰掛けると、わらわらとユニフォーム姿の部員が4人入ってきた。膝元にグラウンドの土がついていた。まさか選手が店に来るとは考えていなかったので、ちょっとうろたえた。
後から保護者と思われる3,4人のおじさんが来たけど、「この子ら試合あるし、急いでやってくれる?」と店員さんに注文したあと、すぐ出ていってしまった。部員たちは私たちのすぐ後ろのテーブル席に腰掛け、メニューを見ながらあれこれ話していた。注文を決めていなかった私は、「ここのオススメって何?」と交流を図ろうと試みたがうまくいかず、結局彼らより先に注文を決めた。彼らは、すぐ出来るざるうどんを頼んでいた。うどんを口に運ぶ手を急がせながらも、野球の話をしていた。
店内には私たちの他に、初老の女性がいた。白髪交じりのおかっぱ頭。やらしくない程度に赤い口紅。昭和初期のレディーっていう雰囲気が漂っていた。カウンターの入り口に一番近い席に座って、なにやら定食を食べていたが、店員を呼んだみたいだ。彼女は、奥でうどんを食べている部員たちを指さしてなにやら言っていた。
間もなく、うどんを食べ終えた部員たちが立ち上がり、ポケットから財布を出そうとしていた。すると、店員のおばちゃんは、「もういただいてるんで」と入り口の側でうどんを食べている女性に目を向けた。最初は戸惑っていた部員たちも、すぐに気持ちを切り替えて、「ごちそうさまでした」と女性にお礼を言った。女性は店を出ようとする部員たちに、「今日、試合?」と訊いた。関係者ではないようだ。何も知らずただその高校のユニフォームを着ているというだけで、昼ご飯代をごく自然に出すことが出来てしまうんだ。彼女の粋が、ただひたすらかっこいいなと思った。本やテレビで見聞きしていた世界が、21世紀の今ここでも繰り広げられていて、その登場人物がまたおっちゃんではなく、おばちゃんとも呼びづらい品の良さそうな女性だなんて!名門校って底深いなあと思った。
2,グラウンドで
地元名門校。町中にあるそのグラウンドには、ふらっと入って試合を見ていく人が少なくない。第二試合が始まったまもなく、私たちの後ろには親子連れがいた。お父さんと6歳くらいの甲高い声の男の子。
お父さんは子どもに野球のことを一生懸命話していた。「見てみろ、あのボール速いなあ」「ランナーが2人。まだアウトがないから、この回点数入るかもしれないぞ」。ところが子どもは、どうしてか準硬式と金属バットのことが気になってしかないようで、お父さんの話も心ここにあらずって感じだった。それでもお父さんは一向に気にしてはないようだった。
話はいつのまにかグランドにことになっていた。「お父さんもなあ、こうやって、お父さん、お父さんのお父さん、おじいちゃんにグラウンドに連れてきてもらったんだよ。そして、野球始めて、高校生のときはここで試合、やったんだよ」。そう言って、へへと小さく笑った。得意げなような照れたような。ここのOBかな?私は耳を澄ましてみた。「試合でここに来たの」。なんだ他の高校か。がっかりした半分、新鮮さ半分。そして、子どもが初めてお父さんの話に感心を示した。「勝ったの?」。すると、「負っけたぁ」。お父さんが高校生に戻った。それまでの静かに話してきかせるいわゆる父親口調ではなく、同じ目線の友達に何の見返りも求めずに話し捨てるような無邪気さがそこにあった。まもなく2人は、試合を最後まで見ずにグラウンドを後にした。
3,OBのおっちゃんが
相手校は、私たちが思っていたより手強くなかった。隣にいたOBらしきおじさんは、「そっち(東山のこと)は一生懸命やりよるから応援してくなる。でも、こっち(自校)は遊んじょる。気に入らない」と何度も何度もぼやいていた。おっちゃん曰く、近年監督が代わって、野球も変わったのだという。このころはやりの自主性野球というヤツ。それはそれで文句はないが、選手の取り組む姿勢が気に入らないという。ま、おじさん自身も、昔がすごすぎたから今の選手を見ても不満になるのは仕方ないと頭ではわかっているようだったけど。
「普段の練習も見てはるんですか?」と訊くと、「僕らはね(と側にいた他のおじさん2人を指さした)。でも、もう今ではOBはほとんど来ないよ。練習見てても飽きちゃう。昔を知ってるから物足りないんじゃないかな?昔はそれこそ、練習が始まったら、グラウンドのあちこちをファンが取り囲んでいたものよ。300人くらいかな?」おじさんはそう言って、あちこちを指差し、ここも、あそこにも、あのブロック塀の向こうにもと力を入れて説明してくれた。「それが今じゃ3人だ。300人が3人じゃ」そう付け加えて豪快に笑った。300人かあ。壮絶だな。ま、その数字は確かでないにしろ、おっちゃんがそこまで痛くなるほど、当時の練習風景は迫力があったということか。
かつての名門校や強豪校で、今はちょっと落ち込んでいるという学校の練習や試合をいくつか見ている。ちょっとがっかりするし、切なくもなる反面、ほっとすることもある。そんな複雑な心境になる。でも、そういう一面を見ることも大事だと思う。いいところばかり見ていても、世界が広がらない気がするし。
☆試合のこととか
試合は1勝1敗。両試合とも前半に大差をつけられたが、1試合目は1点差に迫り、2試合目は逆転サヨナラ勝ちだった。1試合目が終わったとき、監督が「追い上げたんですけどねえ、ツメが甘かったです。次はいい試合をお見せしますよ」と保護者の方に言っていたのがその通りになった。ま、最後は相手校の自滅っていう感じも否めなかったんだけど、それをモノにするのも力のうちということで。
相手校。ベンチの中のヤジというかね。結構、的を射たことを言ってましたね。「このバッテリー、息あってへんぞ」「ピッチャー、一人でやりよるわ」。確かに、バッテリー間ミスによる進塁や得点、多いもんなあ。どっちが原因かわからないけど。でも、相方くんは上手(うわて)で。「やかましい。そんなん、今に始まったこととちゃうわ」。
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