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2001年08月01日(水) ■ |
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魔法 |
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野球は、さまざまなものと出会わせてくれる。
音楽もその一つだ。 私は野球中継や関連番組を見ていると、そこで使われるテーマソングにも興味を覚え、CDショップへ走る。今日のお目当ては「BASEBALL」。しっとり聴かせるバラードだ。田中秀典という人が歌っている。関西風に言うと、「ごっつベタな」タイトル。そのまんまやないかいっ! しかし、これが自称「テーマソングフリーク」の私の心を捕らえたのだ。
「BASEBALL」は、高校野球京都大会がテレビ中継された際のエンディングで流れていた。何気なく聞いていたはずだが、気付いたら画面の至近距離まで接近し、正座をしていた。野球テーマの大半は、選手(たいていの場合が高校球児)を応援する立場の女性から主人公だと相場が決まっている。 ところが、この歌は逆なのだ。選手が応援してくれている人のことを思って歌っているものだからだ。 また、ここには実際選手が持っていそうな本音も見え隠れしている。そのフレーズを2,3上挙げてみたい。
「弱音を吐かせてmygod」 「期待に応えたいんだ 無理かもしれないけど」 「怠けたい そんな弱い意志がどこか僕にあった気がする」
高校球児はどうも「ひたむきでまっすぐ」という部分だけが表に表れがちだが、こういう弱い部分はあまり見えてこないし、見てはいけないような風潮も否めない。作詞もされている田中秀典さんは、そういうところに疑問を漢字られたのかもしれないなと思った。
その中でも私が一番印象に残っているフレーズは、サビでもある一節。
「頑張れ」 その一言だけが 僕のバットに魔法を掛けたんだ
もし、本気でこう思える球児がいたら、怖いものなしだと思う。野球ほど本人の努力とかけ離れたスポーツはないと思う。神頼み的要素とても多い。「奇跡は日々の練習のたまもの」でもあるが、日々練習したからといって奇跡が起こるろは限らない。自分の能力や努力も大事だ。しかし、それ以外のものもある。 それを奇跡とか神様とかいう言葉ではなく、「魔法」と表現して作者は素晴らしい感性の持ち主だと思う。
そう、野球は魔法なんだ。 笑われるかもしれないけれど、幼いころ、テレビアニメでステッキ一つで呪文を唱えたら何でも出来る魔法使いの少女に憧れた。自分もなりたいと思った。誕生日が近くなると、母におもちゃ屋で売っている魔法のステッキをねだった。 やがて、魔法が現実とかけ離れたものだと知った。そんな私は今、野球にのめり込んでいる。バットという名の、グローブという名の、強靱な肉体という名のステッキでスタジアムは魔法にかかる。そういえば、ペナントレースで優勝目前になると叫ばれるあれも「マジック」…。すなわち「魔法」と呼ばれている。 そっか、野球の危機が叫ばれながらも、球場に人が集まるのは、それがあるかわなんだ。 球界にはさまざまな問題がうずいている。ドラフト、FA、選手の年俸の高騰、プロアマの壁、少子化現象…数えあげたらキリがない。阪神だった、いつまでたっても優勝できない。でも、それでも多くのファンが野球から離れられないのは、魔法にかかっているからだ。
この魔法は、いつまでたっても解けて欲しくない。
「BASEBALL」
弱音を吐かせて mygod 血豆だらけの手が雨に濡れてとてもしみるんだ とても宛てがなくて 何かやりきれなくて 僕がどっかに行っちゃうようで
“甲子園”と書いたずぶ濡れのTシャツは ぼろぼろになって見るも無惨 グランドの向こう側 誰かの影を見たよ それが君だとは気付かずに
涙を拭うその仕草を 君に見られた放課後 「頑張れ」でもその一言が 僕のバットに魔法を掛けたんだ
期待に応えたいんだ 無理かもしれないけど 他に何も見当たらないから 掛け声がかすれても無意識に叫んでた それは君のエールのおかげ?
怠けたい そんな弱い意志がどこか僕にあった気がする ありがとう こんな僕なのにさ 独りじゃないんだって思えたよ
すり減ったスパイクも 穴だらけのグローブも 息を吹き返すように僕に力を与える
真っ暗なグランドに佇む僕を包み込むように 眩くダイアモンドを照らすバックライト そんな君でいた たとえばそれが夢のように叶わない望みだとしても 「頑張れ」その一言だけが 僕のバットに魔法を掛けたんだ
「頑張れ」君の声が聞こえる It’s my life 君あってのベースボール
作詞作曲・田中秀典 編曲・森俊之 universalmusic
後日談
田中秀典さんが、地元のラジオ番組にゲスト出演された。 21歳というお若い年齢に驚いた。 この曲は、野球部にいる友人を見て作ったのだそうだ。 選手にかわるプレッシャーとか弱さとかそういうものを表現したかったのだとおしゃってた。 母校は最近甲子園ではご無沙汰の千葉県の古豪だそうだが、一体どこなんだろう。
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